リコー、「360度カメラ」に見いだす大転換への道 法人向け用途が拡大、脱「複合機一本足」のカギ

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次の焦点は、こうした新領域の育成で売り上げ規模がケタ違いに大きい複合機領域の落ち込みを補えるかだ。

リコーは目下、経営目標に「複合機の会社」から「デジタルサービスの会社」への転換を掲げる。世の中のペーパレス化の流れに合わせ、印刷量に応じ課金する従来ビジネスから、業務のIT化・効率化を支援するデジタルビジネスへと軸足を移すことを企図しているのだ。

テレワークの拡大により、事務機市場は大きな痛手を被っている。リコーもご多分に漏れず、複合機販売を含むオフィスプリンティング事業は2020年4~12月期の営業利益が前年同期比9割減に落ち込んだ。

一方、電子署名サービスなどの業務ソリューションを提供するオフィスサービス事業は同期間の営業利益が前年同期比4%減と、軽微なマイナスで済んだ。10~12月の3カ月だけを見れば、同事業の営業利益は前年同期比46%増と絶好調の水準に戻っている。

端末で蓄積した業務データも活用

JAXAとともに公開した宇宙空間で撮影した360°の全天球静止画・動画(動画:リコー)

業務効率化への要求はコロナ後も健在で、リコーにとっては転換を推し進めるビックチャンスといえる。

今年3月に発表された中期経営計画では、オフィスプリンティング事業内で複合機以外のエッジデバイス(顧客接点となる端末)とサービスの提供を新たに始めると発表した。テレワーク関連や、店頭での非接触・非対面セルフサービス端末などを想定する。

2025年度のオフィスプリンティング事業の売上高目標は7700億円。そのうちの500億円をこの新ビジネスで稼ぐことを目指す。年間売上高が2兆円近くあるリコーにとって規模は大きくないが、複合機以外の領域で着実に新ビジネス創出を狙う。

山下良則社長は2021年4月の東洋経済の取材に、この中計への手応えと今後の展望を語っている。「リコーの複合機を利用していない顧客にもシータを通じてサービスを提供し、顧客の幅を広げられている。加えて、独自のエッジデバイスを開発すれば、オフィスだけでなくさまざまな場で顧客の業務データを蓄積できる。それらを分析し、新たな価値として顧客に還元していくことがデジタルサービスの会社として重要だ」。

リコーは中長期の目標として、2025年度までに営業利益1500億円の達成も掲げる(2021年3月期は490億円の営業赤字予想)。複合機本体の販売数や印刷量が減少していく中で収益性を高めるには、独自のエッジデバイスの開発・活用が欠かせない。

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大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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