リコー、「360度カメラ」に見いだす大転換への道 法人向け用途が拡大、脱「複合機一本足」のカギ

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こうした用途でシータを使ってもらうため、リコーは2014年にバーチャルツアーの制作・公開を容易にするクラウドサービス「THETA 360.biz」を開始。直近でもコロナによる需要増を受け、建設現場の状況共有を効率化する「RICOH360 Project」(2020年11月開始)などのクラウドサービスを矢継ぎ早に投入した。

「THETA 360.biz」では、シータ本体を含む利用プランを公開コンテンツ数に合わせ月1万円から提供している。2020年の新規契約数は前年比で5割増加した。不動産以外の業種でも導入が進んでおり、アパレルやカーディーラーなどの営業現場で活用されている。

360°パノラマ画像へのCG家具自動配置サービス「AIステージング β版」のサービス画面(画像:リコー)

今年1月には、AI(人工知能)が360度画像の部屋にCGの家具を自動で配置するサービスを試験展開。体験した不動産業者からは「サイトの来訪者数が伸びた」「家具を置いた部屋のイメージを直感的に伝えられる」と好評だ。

リコーは複合機の営業を通じて顧客の業務上の悩みを把握し、不動産・建設・介護など幅広い業種に合ったデジタルサービスを提供している。シータの用途開発が進展したのにも、こうした背景があった。

「後乗せ機能」の開発を外部に開放

かつては消費者向けを主軸に展開していた360度カメラだが、そもそもどう使うのか、どう楽しめばいいのかといった使い方の課題があり、2017年ごろには市場の伸び悩みが見られたという。一方で2018年になると、360度カメラを自社で使いたいという法人のニーズが目立つようになった。

シータを手がけるSmart Vision事業センター副所長の藤木仁氏によれば、「このころからシータの機能拡充を一気に加速させた」。ハードの面だけでなく、従来のカメラにはない使い方をリコー内外で模索、用途・目的に基づいた販売戦略を練った。

グーグルなどの外部サービスとの連携も進めた。シータの一部機種にはアンドロイドOSを搭載し、自動で人物の顔にぼかしをかけられるなどの新たな機能を後乗せすることもできる。こうしたプラグイン(機能)はリコーによる開発だけでなく、リコー以外の企業や個人も開発でき、リコーのサイト上で共有することができる。

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