地味にすごい「地図帳」50年間で変わったこと 市町村名や色使い、取り上げるテーマなど変化
さらに地図(一般図)のほかに日本全体を図化した主題図(ある特定のテーマを表現した地図)が入っているのですが、この間、中身はだいぶ変わりました。
文科省の学習指導要領が10年に1回改訂され、その時の授業の目的と世界的な情勢をふまえて切り替えていくのですが、1964年版では掲載されていた「国土の開発と保全」という項目が今は丸々なくなっています。
それと当時は、どこに何があるかという分布を示す主題図が中心だったのですが、今はエネルギー問題や人口問題など、課題を考えさせるための主題図が増えてきたように感じます。
最も大きな変化は?
二宮書店で初めての地図帳として『高等地図帳』を発行したのは1963年です。この間で大きかった変化は、地図や原稿作成から印刷までの製作過程が、アナログからデジタルへ移行したことですね。段階を踏みながら、2003年から新学習指導要領になって、すべてデジタル製作になりました。
アナログ時代の地図は、専用の合成紙に手書きで1本ずつ製図するというやり方をとっていました。柔らかい等高線も製図士さんが手で書いていましたから、途中で線の太さが変わってはいけないし、とくに紙には水気がよくないんです。いくら合成紙とは言っても伸縮してしまいます。宅配便もない時代、製図士さんのところに直接もっていくのですが、気を遣いましたね。取り扱いにもさまざまな制約がありました。
なので当然ながら地図制作にかかる時間もひとつの図に3カ月から半年かかり、その間、われわれは地名の原稿を作ったりして作業を進めるのですが、やっと新しい本ができたと思っても、すぐ次の改訂作業に取り掛かるような感じでした。
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