地味にすごい「地図帳」50年間で変わったこと 市町村名や色使い、取り上げるテーマなど変化

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市街地の表現も変わりました。今は「七大都市」(注:1964年当時の人口100万人以上の都市。東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、北九州)という言い方もしませんし、今と違い1964年時は福岡市より北九州市の方が人口が多かったのも面白いですね。

色遣いも途中から市街地の色を黄色に変更しました。これは赤と緑の区別がつかない色覚特性を持つ生徒さんのためにそうしたのですが、ほかにも県名の色を白く縁取るようにしたり、すべての生徒さんに見やすくなるようにという配慮をこの間意識してきています。

――学校用の地図帳の特色は?

基本は「探したい(授業で使うような)地名がある」ということを大事にしています。これは日本も世界も同じです。ただ、全部の地名を入れることはスペース上できないので、国名の配置や首都名をさらに大きくしたり何をどう選択し表現するかで各社の違いが出るのです。

『高等地図帳』の地図では基本的な地名(国名・首都名・主要な都市・山脈や川などの自然地名)は確実に押さえています。さらに日本地図の場合は、市町村名は必ず入れることになっていて、字名という形で旧市町村名も残しています。

また、世界地図では交通の結節点となっているところは必ず入れています。人口が少ないところをどこまで入れるのかは悩ましいのですが、地図を比べてみればわかるように、この間に増え続けた、世界遺産やラムサール条約登録湿地などの要素と見やすさとのバランスをどう工夫していくのか、しかも縮尺に合わせて、使う生徒さんにとって地名が混んで見にくくならないようにということを常に考えています。

地図帳の構成の変化は?

1964年時では日本が先に載っていたのですが、今は世界が先にきています。現在の高校地理の授業では、世界の人々の多様性や国際理解といった、世界のことを学ぶことが中心になっており、授業の最後の方で「世界の中の日本」を学ぶというように、まとめ的に扱うことが最近の授業の主流だからです。

以前は、まず日本国土を十分に理解したうえで世界のことを、という考えだったのが、日本のことを取り扱うことがだんだん減ってきてそうなったんだと思います。ただ、その一方で県名や位置などのわからない人が多くなってしまったようにも感じます。

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