日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて 片岡剛士著 ~デフレの20年間を検証 財政金融政策の妥当性を問う

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日本の「失われた20年」 デフレを超える経済政策に向けて 片岡剛士著 ~デフレの20年間を検証 財政金融政策の妥当性を問う

評者 津田倫男 フレイムワーク・マネジメント代表取締役

 昔ビジネススクールで、レーガン時代の米国高金利政策の必然性とその経済効果について学んだ。金利と通貨供給量というわずか二つの指標で、レーガン政権のインフレ退治の功罪を解説した教授の腕前にほとほと感服したものだった。本書に対してまず同様な感想を持った。

本書の焦眉は、フェデラル・ファンド・レート(FFレート)を用いた考察である。実際のFFレートと、あるべきレート(テイラー・ルールに基づいて試算されるレート)との乖離を、住宅ローン金利やマネーサプライなどと比較し、経済政策の妥当性を検証している。

結論だけ少し述べると、FRB(米連邦準備制度理事会)の2004年までの低金利政策は誤りで、02年以降は金利を上げるべきであったという。もしこの政策を実現していれば、リーマンショックに代表される金融危機もあれほど酷くなかったと示唆している。

続いて低金利以外の住宅バブル発生の要因を欧米各国の住宅政策の変更に求める。1980年にさかのぼって、米国で住宅担保金融の上限金利が撤廃されたことを指摘し、86年の税制変更で住宅ローン金利が控除対象となったことを述べる。こうした制度変更は融資先に困っていた米国S&L(貯蓄貸付組合)救済ではないかとも推理する。

そして、悪名高いCDS(信用リスクを転換する金融派生商品)の跋扈(ばっこ)へと筆を進めてゆく。

リーマンショックがCDS市場の「未整備」を一因とするという主張には評者としては納得できないが、「資産価値が上昇している局面で、ファンダメンタルズに基づく部分と基づかない部分を中央銀行が適切に判断可能なのか」との問いかけはもっともなものだ。

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