以前より女性が働きやすい環境になったとはいえ、まだまだ改善してほしい点もある。例えば乗務中のトイレ問題や、男性の先輩ドライバーの意識だ。150人いた同期の中には、結婚を機に退職した女性も出てきた。ここで仕事を頑張りたいと思う反面、このままでいいのかと思う面もある。コロナの存在が、未来のキャリアについて考える契機にもなったという。
「以前はとにかくがむしゃらに仕事をしていましたが、今はこの会社に骨を埋めるべきか迷い始めたんです。別の会社も見て視野を広げたいな、とも思うようになりました。仮に転職しても2種免許があるので、結婚して子育てが落ち着いたタイミングでも戻ってこられますから。時短勤務ならパートで働くよりも、かなり稼げる。それを許してくれるのも国際自動車の懐の深さです。
世間からみるとタクシー業界の印象は良くないかもしれません。ただ、会社や人により千差万別の中で、「タクシードライバー」と一括にされるのは違う。若い世代が頑張って、そういった世間の偏見やイメージを少しでも変えていきたいとも思いますね」
教員採用試験に落ちてタクシー業界に
三鷹営業所に勤務する谷治優平さん(23)は、コロナ禍の影響が直撃した昨年4月に国際自動車へ入社した。3人兄弟の長男として練馬区で育ち、都内の大学へ進学。大学時代は文学を専攻し、教職を目指して教員免許を取得している。
教員試験への準備を優先したため、就職活動は4年の春から。2社のみ活動し、国際自動車から内定を得た。タクシー業界に入ったのは教員採用試験に落ちたことによる、消去法的だったと当時を振り返る。それでも、社会人として働くことへの切り替えは早かった。
在学中の秋頃からコツコツと研修に通い続け、124名の同期の中で最速で研修・地理試験を突破し、昨年6月から乗務に当たっている。当時はコロナの感染者増の真っただ中だが、手探りで街中を走らせていた。
「普段は恵比寿や六本木、最近では麻布十番や西麻布といった場所を流しています。学生時代は文学サークルにがっつりハマり、書店でアルバイトをするなど、どちらかといえばインドア。だから東京に住みながら、華やかな場所へはほとんど行く機会がなかったんです。それが、この仕事をしてから東京という街を深く知ろうと思うようになった。
お客さまも本当にいろんな方が来て、『現実は小説より奇だな』と視界が広がった(笑)。水揚げ(1日の売り上げ)は一年を通して、だいたい平均で4万円程度、緊急事態宣言下で3万円前後でした。かなり売る同期もいるので、数字は低いほうです。まだコツを掴めていないというか、走り慣れていない。
この仕事は考えて、研究しながら動ければ稼げますが、今はそのノウハウを模索している段階です。仕事でいちばんツラいのはお客さまを乗せられない時間ですね……」
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