1年目年収が同級生の3倍!タクシー新卒の真実 年収1000万円を超えるエースに成長した人も

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谷治さんがタクシー業界を選んだのは、比較的時間に融通が効くタクシー業界で教員試験の勉強時間を確保したかったこともその理由だ。そして、もうひとつ「ジョブトレ」という社内システムが挙げられる。これは1年間ドライバーとして働き、他の部署へと早いスパンで移り経験を積ませるというものだ。

谷治さんは実家暮らしで、生活に貧することはなく、どこか飄々とした印象を受けた。最速で教師を目指すなら、1年間集中して教員試験対策をするという選択肢もあるのでは?とたずねたが、あえてその道は選ばなかったという。

「タクシーの仕事の最も魅力的なことは、空いた時間が多いことです。だから乗務時間も含め、勉強をしながら働くということが可能なんです。実際、先輩方も資格取得したり、自分のやりたいことを実現するために仕事をしているという方も多い。

今は新卒だから、若いから、ということで仕事を選ぶ時代ではないし、より多様的な生き方が認められてもいい。アルバイトをしながら教師を目指すということも考えましたが、それでは社会人経験は積めないからもったいない。

国際自動車は、面接の際に『教師になります』と伝えても採用して貰える柔軟性があった。自分なりの人生設計があるから、お客さまに何か言われても「こんな人もいるんだな~」で過ごせて、焦りや負担につながらないところは良いことですね。たぶん都合の良い性格なんですよ(笑)。だから仕事でストレスをため込むこともないです」

生涯の仕事とする気はないが、居心地は悪くない

谷治さんのように目標の資格取得や職業に就くための準備期間として業界に入る人は珍しくない。司法試験を受けたい、公務員試験のため、社労士や行政書士を志すドライバーもいた。

彼らに共通するのは、タクシードライバーを生涯の仕事とする気はないが、決して居心地が悪いとは感じていないということだろうか。そして、その自由さが若い世代がタクシーを選ぶ最大の理由であるという気がしている。取材の最後に、谷治さんはこう話した。

「4、5年働いた後に教員試験が受かれば退社して、教師の道へ進みたい。その気持ちは今も変わりません。回り道と思われるかもしれませんが、同じ教師になるにしても社会人経験があるかないかで、生徒への接し方も違ってくるとも感じています。

タクシードライバーとして、いろんな方と接して、見てきたということは後の人生で必ず活きてくる。そして、もっと社会を深いところで知りたいと考えるようにもなりました。もし何かのキッカケでこの業界に戻ってくることがあっても、それもまた人生かな、と思いますしね」

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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