ウォークマン、グーグル、スタバの意外な共通点 成功の理由は「余計なものを省くこと」だった
同様にツイッターの存在理由は、投稿の文字数を理不尽に制限することから生まれた。ウーバーは最初、事前に車を予約できなかった。『ザ・ウィーク』誌のように大成功している刊行物は世界の新聞を効果的に取り上げ、多くの無関係な中身を取り除くことによって読みやすくしている。
マクドナルドは伝統的なアメリカの食堂のレパートリーから99%の商品を取り除いてしまった。スターバックスは創業した最初の10年間は食べ物をほとんど重視せず、コーヒーだけに専念していた。格安航空会社は機内では必要ない快適さが何なのかに基づいて競争した。
使い勝手のよさ──そして購入しやすさ──を提供したいなら、多くの機能があると主張しているスイス・アーミーナイフのようなものを勧めないほうがいい場合が多い。携帯電話という注目すべき例外はあるが、たいていの場合、人々は1つの目的にしか使えないものを買うほうがよいことに気づく。
しかし、エンジニアの考え方は──ソニーの場合のように──これに逆行している。機能を取り除くというアイデアは実に非論理的に思えるし、どんなビジネスや政府でも、従来型のロジックを無視せよと主張するのは非常に困難である。あなたが取締役会長か最高経営責任者か、責任のある大臣でもないかぎり。
意思決定に影響する解雇や非難への恐怖
人間は本能的に可能な範囲で最善の決定をしたがるものだと思われるかもしれないが、ビジネスの意思決定を動かすもっと強力な力が存在している。責められたくないとか、解雇されたくないという思いだ。
非難されないようにするための最高の保険は、あらゆる決定の場面で従来型のロジックを用いることである。「IBMを買ったことでクビになった者はいない」はIBMの公式なスローガンではなかった──だが、ITシステムの企業のバイヤーたちの間で広く認められるようになると、その言葉は何人もの評論家が「存在する中でもっとも価値があるマーケティングのスローガンだ」と呼ぶものとなった。
企業間取引で最強のマーケティング方法は、自社製品が優秀だと説明することではない。手に入る代替品で間に合わせた人に恐怖心を植えつけたり、不確かさや疑念を覚えさせたりすることだ(恐怖[fear]と不確かさ[uncertainty]と疑念[doubt]は今やFUDと略すのが普通である)。
いい決断をしたいという願いと、解雇や非難をされたくないという欲求は一見すると、似たような動機だと思われるかもしれないが、実を言えば、決して同じものではなく、ときにはまったく異なっているのである。
(翻訳:金井真弓)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら