「娘の障がい」契機に国会で闘う彼女の壮絶人生 「政治家の常識は古巣リクルートなら瞬殺です」

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――スクープですね。

ところが、インタビューが終わると私の上司はそのテープを系列キー局のテレビ東京に渡してしまいました。私たちの手を離れたテープは東京で編集され、テレビ東京制作の番組の中で、「JR西日本の首脳、事故後初めてテレビ東京のカメラの前で懺悔」といった形で報道されました。番組で描かれた内容は、私が井手相談役にお約束していた「絶望の中にあっても未来を描く」ものでは、残念ながらありませんでした。

――それで「もう、この会社にはいられない」と。

それがすべての理由ではありませんが、確かに少し疲れたのかもしれません。これからは、もっと心静かに働きたい、そう思って資生堂に転職しました。ところが、どうしても心が言うことを聞かないのです。

1カ月で退職を決意し、リクルートの中途採用試験を受けに行きました。人事担当者は会うや否や「今日、SPI(適性診断試験)も受けていける?」と。まるで「もう一杯、コーヒー飲んでいける?」くらいの感じで筆記試験を勧められ、翌日には内定をいただきました。そのスピード感に唖然としながら、2006年7月、リクルートの社員になりました。

いまだ社内に息づいていた「江副イズム」

「”これぞリクルート”という部署で働きたい!」とお願いしたところ、『住宅情報(後にSUUMO)』に配属され、大手デベロッパーさんから経営戦略の相談を受け、ハウスメーカーの新規顧客を開拓し、街の不動産屋さんに飛び込み営業する、という3年間を過ごしました。

――2006年というと、すでにリクルート事件から17年が経っており、創業者の江副浩正氏は、持ち株を手放していましたね。

しかし江副イズムは確かに社内に息づいていて「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という旧社訓が書かれたプレートをデスクに置いている先輩もいました。

リクルートという会社は、何を目指すのか? チームでゴールを共有する手間を惜しまず、フォーマットを作って営業の質を均一にし、ナレッジ文化やショーアップされた表彰制度を質向上の仕掛けとしながら、一丸となって目標達成に執念を燃やす。その熱伝導のスピードやユニークな社内制度、開放的な風土が多様な人材を惹きつけている、そんな会社だと思います。

――具体的に言うとどんな制度があったのですか?

キックオフという四半期に一度の行事があるのですが、そこで流れるビジョンムービーには、自分たちが創っている、または売っているメディアがいかにたくさんの人を幸せにしているか、社会をいいものに変えているか、未来予想図はこんな感じだけど、われわれのメディアはそのとき、こんな役割を果たしているはずだ、というように、目先の数字にとらわれがちな日常から、ふっと視線をあげてくれます。

またミッショングレード制(役割等級制)の人事は「360度評価」なので、上司のみならず同僚や後輩、他部署やクライアントからも評価され、自己評価と他者評価のズレが可視化されます。

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