家事、介護…暮らしの中の外国人労働者 もう、彼らなしでは成り立たない!

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さまざまな現場で働き、いまの日本を支える外国人たち。人手不足を補い、女性の社会進出を陰で助ける。日本と自分の未来を見つめる彼らを追った。
フィリピン人メイド 田村メルスィーさん(写真右)。この家の主婦、桜井敏江さん(56・左)は米国在住歴もあり、メイドでベネズエラ人を雇っていた。「来てくれると家が明るくなります」(撮影:高井正彦)

海の見える高台にある横浜きっての高級住宅街。田村メルスィーさん(30)は、家に入るなり、2匹のゴールデンレトリバーに英語で声をかけた。

「Stay!」「Good,good」「Sit!」「Yes,you are very cute」

メルスィーさんはフィリピン・ミンドロ島の出身。勤務先のダイビングショップで日本人の夫と知り合った。2002年に結婚。横浜市内で子ども2人を育てる。フィリピン人の友人からメイドの仕事を紹介された。派遣元の会社に登録し、ほぼ連日、横浜のどこかの家で掃除や洗濯をこなす。

フィリピン人メイドの「天性」は世界で評価される。シンガポール、香港、米国やヨーロッパでも「人気ブランド」だ。

日本人より割安

都内の出版社に勤める女性は週1回、フィリピン人女性に家の掃除を頼む。仕事柄夜遅いことも多く、会社の先輩から「日本人より割安」と紹介された。

午前9時から約3時間半。家全体に掃除機をかけ、台所や風呂、トイレを掃除し、シーツを替え、アイロンをかける。この間、彼女は手を休めない。

メイドを頼む以前は夜中や週末に自分でやらざるを得ず、睡眠不足でイライラしていた。

「週末に子どもの学校の行事や習い事にも出かけられる。なにより自分自身が精神的にすごくラクになりました」

メイドのフィリピン人は外交官や外資系企業幹部などの家庭で働くビザで来日しているが、空いた時間に日本人家庭でも働く。時給1500円+交通費、というのが相場だという。

雇い主の帰国後にメイドだけ日本にとどまって個人のツテで働くこともあるが、不法就労になり、盗難や連絡が取れなくなるトラブルもあるという。

安倍政権は都市圏で「メイド特区」を認め、現在は制限しているビザ発給を緩和する構えだ。家事に縛られず、社会で能力を発揮してもらうためだ。

メルスィーさんが登録する家事代行サービス会社「シェヴ」(東京都港区)は、約100人の日本人配偶者のフィリピン人スタッフを抱え、「週1回3時間1万円」という統一プランで業界をリードしてきた。メイド需要の拡大を見込み、今後はミドルクラスの共働き夫婦向けの割安型も打ち出す構えだ。同社の柳基善社長は言う。
「働き手の保護や業界のルールが明確でないので、日本は世界の模範になるよう率先して健全化に取り組むべきです」

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