家事、介護…暮らしの中の外国人労働者 もう、彼らなしでは成り立たない!
南スマトラ出身。地元で看護師として救急病院で働いていたが、経済連携協定(EPA)の枠組みで11年に来日した。
「自分の発音が悪くて日本語が通じないと悔しい。でも、皆さんに受け入れてもらった感じがあると、幸せな気持ちになる」
施設の近くに部屋を借りた。来年1月に控えた介護福祉士の国家資格試験のため、ベッドからの移動、入浴や食事の世話などの仕事をこなしながら、家に帰って勉強を続ける。
インドネシアなどから、EPAの締結によって介護要員が招聘されている。メラさんのように、入所者や現場の評価は総じてかなり高い。ところが、日本人と同じ介護福祉士の国家資格の取得を義務づけているため、制度の有効活用ができているとは言いがたい。
メラさんは、母国の学校や日本の研修センターで1年以上も勉強し、3年間の施設実習で国家試験に備えるが、試験に2度落ちると帰国させられる。困窮する介護現場の「助っ人」に来てくれる彼女らに、これほど負担をかける意味があるのか疑問だ。メラさんたちも30歳を過ぎれば結婚や帰国を考えるだろう。
日本に外国人の労働者が本格的に現れたのは90年代以降。出入国管理法の改正で日系人の就労条件が緩和され、大型の工場がある地域が日系人であふれた。その半面、言葉や習慣の問題で生活や教育に支障を生む状況が広がった。
母語だと安心できる
医療もその一つ。千葉県佐倉市で、歯科医院を経営する古谷彰伸さん(50)は、7年ほど前に歯科助手を探していたとき、患者の日系ブラジル人女性の日本語がうまいことに驚き、「うちで働かない?」と声をかけた。口コミで「ポルトガル語が通じる歯科医院」との評判が広がり、関東一円から患者が訪れる。患者の2~3割は日系人だ。
現在、医院で働く吉田ダニエレさん(29)は日系3世。近くの工場で働いていたが、古谷さんに医院でスカウトされた。
診察室では普通にラテン系の言葉が飛び交う。ブラジル人だけではなく、ペルー、チリ、アルゼンチンなどの患者も多い。
「南米では歯科治療は保険適用がなく、治療費は固定額の前払い。患者さんには日本の保険制度との違いを説明します。母語でないとなかなかこういう話はできないので、安心してもらえるのでしょう」(ダニエレさん)
(AERA編集部:野嶋剛)
※AERA 2014年7月14日号
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