「菅首相」にアメリカが妙に期待している理由 バイデン氏が初めて直接会談する外国首脳に

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日米の同盟強化の目標は、日米の防衛相と外相が発表した最近の2プラス2声明で明確にされている。そこでは、中国を中心的な共通の脅威として初めて挙げると同時に、民主主義の推進や「台湾海峡の平和と安定」を含む、あり得る共同行動の範囲に言及している。アメリカの指導層の一部は、日本が戦略を転換し、中国政府と共産党(CCP)の指導部を怒らせないようにする努力をかつてほどしなくなる、と見ている。

「日本の指導者たちは、吸収、強制、隠蔽を継続的に推進する中国共産党に対抗せずにはいられなくなる、という結論に達しつつあるのだろう」とマクマスター氏は指摘する。「志を同じくする自由な民主主義諸国が、独裁的な重商主義モデルを推進しようとする中国に対抗しなければ、日本は孤立し、世界の自由と、繁栄と、安全性が低下してしまうかもしれない」。

「反中国」の姿勢が強くなっている

アメリカの防衛当局者たちは、日本が憲法の集団的自衛権の新たな解釈により、日本の領土をはるかに越えた範囲の安全保障に貢献すると想定し始めている。

「ヒマラヤの奥地から南シナ海、台湾、尖閣諸島に至るまで、どこであれ武力の行使によっては目的を達成できないことを人民解放軍に理解させる必要がある」とマクマスター氏は強調する。「日本の自衛隊の戦力強化は、地域全体における拒否的抑止力の確立にむけた努力の重要な部分だ」。

反中国的なアプローチは、菅首相とバイデン大統領の会談後の声明でも繰り返されると予想されるが、アメリカの当局者たちは、日本側もこのアプローチをアメリカほどではないにしても、強く主張していると語る。

「2プラス2声明で強い表現を望んでいたのは、日本側のほうだった」と周辺事情に詳しいあるアメリカの防衛当局者は明かす。この当局者は、岸信夫防衛相と中山泰秀同副相がこうした強い姿勢の原動力となっていると評価し、彼らを岸防衛相の兄である安倍前首相に後押しされた「対中国のタカ派」と呼んでいる。

しかし、日本の保守派にとってのこの勝利には代償が伴っている。日本政府は、人権に始まり、防衛の分野でも、またアメリカによる韓国との三国間協力の推進など、複数の分野でアメリカ政府の要望に応えるのに苦労することになると予想される。

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