「菅首相」にアメリカが妙に期待している理由 バイデン氏が初めて直接会談する外国首脳に

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「ほぼすべての分野において、日本ははたしてどこまでできるのかという疑念が存在する」とカーネギー国際平和基金のショフ氏は言う。カーティス名誉教授も、バイデン政権は「多くの失望を予期している」と付け加える。

日本とアメリカにおける最も明白なギャップは、米中対立を「民主主義と権威主義」の間の対立と見なしているバイデン政権の、人権問題を対中国戦略の中心に置きたいという意志に関するものだ。

人権問題には及び腰の日本

中国の香港における民主的権利に対する取り締まりと、イスラム教徒の少数派ウイグル族の抑圧の問題は、ミャンマーでの軍事クーデターへの反対姿勢とともに、バイデン政権の人権に対するアプローチの最前線に位置するものだ。

菅政権は、これらの人権侵害をめぐる形式的な抗議には忠実に参加したが、アメリカなどが採用した具体的な制裁措置への参加についてははっきりと拒否してきた。無印良品などの日本企業は、ウイグル人の囚人が栽培した綿花の購入停止も、ミャンマーへの投資抑制も、行っていない。

「ウイグル問題に関して中国との対立が激しくなったとき、日本はどこにいただろうか?隅っこのほうに隠れていただけだ」とカーティス名誉教授は指摘する。

一方で、日米による連携の相乗効果が最も見られそうな分野は安全保障だ。国境を越えた安全保障の領域拡大への日本の前向きな姿勢は、アメリカで歓迎されている。

これは、東南アジアでインドネシアやベトナム、および日米豪印戦略対話(クアッド)の構成国であるオーストラリアやインドとのパートナーシップを深めていることにも表れている。防衛費の着実な増加とF-35第5世代戦闘機などのアメリカ製兵器の購入は、アメリカ軍と自衛隊の間のより緊密な作戦協力への期待を高めるものだ。

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