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ケインズ「一般理論」がいま読まれるべき理由 「20世紀最高の経済学書」の何がすごいのか

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そして、金利がなくなって久しい昨今、さらにはコロナショックに見舞われている私たちの経済環境にとって、いつ不況に陥っても不思議ではないにもかかわらず、かろうじて小康状態を保てている。その恩恵も、実はケインズの贈り物なのかもしれない。

『一般理論』は読みにくい?

『一般理論』が名著でありながら読まれてこなかった理由はいろいろ考えられる。まずは経済学の特徴である「モデル」による思考への慣れがある程度は必要だ。このあたりは物理学の本の読みにくさに通じるところがあるだろう(もし慣れたいという方には『論理の方法』(小室直樹著)をお勧めする)。

また、今となっては常識となってしまっているために逆に論考の重要性がわかりにくくなっている、ということもあるだろう(たとえば当時は金本位制が普通でありそれが前提になっていたこと、「貯蓄」の性質を考える場合に銀行預金というよりはタンス預金を念頭に置くべき、など)。

あとは時代背景、なかでも当時の経済学の常識を踏まえる必要があり、それから自由になるためには仕方がない戦略だとはいえケインズの強烈なレトリックに慣れる必要もある。

そして、かつての翻訳が必ずしも読者フレンドリーでなかった、という理由もあるだろう。幸いにしてこれは、山形浩生氏の訳出によって解消されている読者も多いのではないかと思う。

さらに一歩進んで、『超訳』の刊行によって、もっと幅広い人が手を伸ばすことが可能になるだろう。ケインズの『一般理論』は経済学部を出てケインズ経済学を理解している人でさえ、読んではみたいもののハードルが高い本ではある。そのエッセンスをそのまま体感できる『超訳』ならば、経済学とケインズ自身の野心、挑戦、葛藤、そして経済学者が憧れてしまうその魅力を現代にいながら味わい尽くすことができるだろう。

何よりも『一般理論』を世紀の名著たらしめ、社会科学を席巻し、現在も私たちの社会に大きな影響を与え続けているその秘密を“本物”を通して知ることができる。

クルーグマンは『一般理論』に寄せた序文を書いているが、その結文を「読んで、そして驚嘆されよ」(*5)と締めくくっている。その言葉に私たちはいま気軽に乗ってみることができるのだ。

(*1) (*2) (*5)Introduction by Paul Krugman to The General Theory of Employment, Interest, and Money, by John Maynard Keynes、2007(クルーグマン「イントロダクション」山形浩生訳『雇用、利子、お金の一般理論』講談社学術文庫)
(*3)Samuelson, Economics,1948(都留重人訳『経済学』岩波書店)
(*4)2003年の筆者取材にて。

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