「福岡5歳餓死事件」に見るカルト的手口の異様 オウム真理教の内側と重なって見える

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福岡のケースも子どもが死んではじめて異常に気がつく。司直の手によって閉鎖的な環境から解き放たれて、後悔と自責の念に襲われる母親。

ただ、これを洗脳だとか「マインドコントロール」と論評する報道も少なくないが、一連のオウム裁判では弁護側がマインドコントロール理論を主張したものの、ことごとく否定されている。そうして190人が有罪となり、うち13人の死刑が執行された。

不安な時代は判断を狂わす

小さな命と多くの命を奪った2つの事件に教訓があるとすれば、結果的には抜け出せない呪縛に陥っていたとしても、その入口はこの世界のどこにでもあるということだ。オウム真理教の誕生にあった、当時の時代的背景。カネとモノにあふれたバブル経済にわいていた特異な時代。その当時はなかった「ママ友」という世界。そこから放逐される恐怖。

今はコロナ禍にある。この状況がいつまで続くのか、不安は募る。経済的に追い込まれている人たちも少なくない。自粛生活による孤独。そうしたところで、ふっとしたことがきっかけで詐欺にひっかかったり、甘い言葉を信じたくなったりすることがあるかもしれない。

普通なら心が奪われることはなくても、環境が人の心を左右する。判断を狂わせる。そしてカルト的なものにはまる。取り返しのつかない事態に落ちる。誰もがそうなってもおかしくはない、いや、むしろなりやすいと自覚したほうがいいかもしれない。そういう未知の時代を生きている。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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