広島カープ「チケット争奪戦」今年は異変のワケ 「転売ヤー」対策の処方箋ようやく見えてきたか

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“転売ヤー”が稼いだ利益を税務申告しなければ脱税になる。チケット転売サイトの運営会社が協力すれば、無申告の転売ヤーを脱税で摘発することは可能なはずなのだが、その摘発件数はさほど多くはない。

国税庁が毎年公表している『インターネット取引を行っている個人に対する調査状況』によれば、2019年度にインターネット取引を行っている個人に対し、税務調査を実施した件数は1877件で、このうち申告漏れがあった件数は1680件。1件あたりの追徴税額は過去最高の349万円である。

ただ、この統計で言うところのインターネット取引には、ネットオークションのほか、ネット通販、コンテンツ配信、ネット広告、株式や商品先物、為替などのネットトレード、出会い系サイトなどこれらに該当しないその他ネット取引が含まれている。これら全体で申告漏れの摘発件数が1680件、追徴税額の平均が349万円なのだ。

税務当局の摘発を受けているのは、世の中にはびこる転売ヤーのごく一部でしかないことは間違いない。

今年はチケットの「賞味期限」が短い

報道によれば、2月に逮捕された男女は5年間に約1億円を売り上げていながら、逮捕容疑は脱税ではなく不正転売禁止法違反だったからか、女性は起訴猶予、男性は略式起訴で罰金100万円で済んだという。

チケットの不正転売では、不正転売禁止法違反での摘発がたまに報道されるだけで、脱税容疑での逮捕や更正処分については基本的に報道されない。

今シーズンは入場制限がかかっている分、プロ野球のチケットはプラチナ化する確率が高まっている一方で、カープに限らず、各球団ともにコロナの影響で、チケット発売日からゲーム開催日までの間隔が短い。

それだけチケットの賞味期限も短いわけで、転売ヤーとしては短期間に売り切ってしまわなければならない分、厳しい年ということになるはずだ。

コロナが去ればまた転売ヤーの天下が戻ってしまうのでは元も子もない。税務当局には是非とも転売ヤーの摘発を強化してもらいたいと思う次第だ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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