広島カープ「チケット争奪戦」今年は異変のワケ 「転売ヤー」対策の処方箋ようやく見えてきたか

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次の図はスクリーンショットで9日正午時点の残券状況を撮り、その画像をもとに横軸を座種、縦軸を試合開催日としてエクセルに落とし、全体感を見るために縮小してみたものだ。

白い部分が「完売済み」、赤が「売り切れ間近」、オレンジが「残りわずか」、水色が「空席あり」、青が「余裕あり」である。

結局翌10日には全席が完売したようだが、今シーズンは全座席数の半分しか売りに出していない。にもかかわらず販売開始から4時間後でもこれだけの残券があった。

ということは、カープのチケットをターゲットにする“転売ヤー”の数が大幅に減った可能性があるのだ。

券面発送時期の変更が奏効?

“転売ヤー”減少の要因と考えられる原因は3つ。1つは販路の縮小だ。チケットを転売する販路のうち、出品条件が厳しい3大サイトのヤフオク!、メルカリ、楽天市場では、未使用のプロ野球チケットの出品はゼロかせいぜい1~2点。複数ヒットするのは大昔の骨董品級の名試合の半券だけだ。

それ以外のサイトでも、チケットストリートは出品ゼロ。チケット流通センターには大量の出品があるが、出品価格は常識的な水準だ。他の転売サイトでも状況は似たり寄ったり。一部のサイトで一時的に10万円を超える出品もあったようだが、筆者が9日夕方に確認した時点では探し当てることはできなかった

2点目は2月上旬にマツダスタジアムの年間シートホルダーの男女が、不正転売禁止法違反の疑いで逮捕された件だ。報道によれば、2015年から不正転売を繰り返し、1億円近い収入を得ていたという。

これまでも年間シートホルダーによる大量転売は横行していたが、ホンモノの年間シートホルダーが逮捕されたということが実名報道されたのはこれがおそらく初だろう。

ちなみに報道から類推すると、この男女がカープの年間シートホルダーになったのは2015年である。黒田博樹投手がメジャーからカープに復帰することが明かになり、年間シートが3月1日以前に完売したタイミングだ。

そして3つ目が券面の発送時期だ。今回、球団はシーズン途中で入場制限が変更される可能性があることから、チケットの発送を入金直後ではなく、該当するゲーム開催月の最初の試合日の10日前から順次発送する形に変えた。

つまり、転売しようにも、売るための現物が、ゲーム開催日が近づくまで手許に来ないのだ。チケット転売サイトが権利のみの出品を禁止していれば、転売ヤーにとっては現金化できるまでに時間を要する、旨みのない商品ということになる。おそらく“転売ヤー”退治に最も効果を発揮しているのはこれだろう。

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