三菱商事「ベトナム石炭火力」をめぐるジレンマ 投資家から厳しい視線、大手商社「脱炭素」へ

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三菱商事の中西常務は、「日本で発電コストも含めた結果を出し、ブンアン2を含めたアジアに移植できれば理想的」とフリーアンモニアの活用に意欲をみせる。三菱商事の発電容量に占める石炭火力の割合は約1割。海外の石炭火力持分容量は35.3万キロワット(2020年12月末)にすぎない。

丸紅の石炭火力持分容量が約260万キロワット(2021年3月現在)と比べて小さいが、政府が掲げるカーボンニュートラルの方針も考慮し、「(2050年には)石炭火力発電所の持分をゼロにしたい」(中西常務)と考えている。

丸紅や伊藤忠も「脱炭素」へ加速

三菱商事以外の大手商社も「脱炭素」の動きを加速させている。丸紅は3月9日、温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロを目指す「気候変動長期ビジョン」を公表した。出資参画する石炭火力発電事業の売却などを通じて持分容量の大幅な削減を図る。2025年には発電容量を半減させ、2050年までにゼロにする方針だ。

伊藤忠商事も新規の石炭火力プロジェクトには取り組まない方針を掲げる。事業計画を進めていたインドネシア・中部ジャワ州の石炭火力発電所は2021年度中に運転を開始する。

同社の鉢村剛CFO(最高財務責任者)は「(石炭火力には)GHG排出の問題があることを認識しているものの、商人としていったん約束したものを反故にすることはできない」と話し、プロジェクトを継続する方針を示した。

石炭火力事業を推進する企業に対する投資家の視線は年々厳しさを増している。世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは2021年1月に投資先企業の経営者に送付した書簡を公表。この中で、「(2050年のCO2排出量ネットゼロに向けた)準備が迅速にできない企業は事業面が芳しくなく、企業価値も低迷することになる」と警鐘を鳴らした。

三菱商事の垣内威彦社長は2021年の年頭あいさつで、「(エネルギーの)安定供給という責任を全うしながら、並行してCO2削減という社会問題を解決していく」との方針を示した。同社は2021年度中に脱炭素が求められる社会でどのようにエネルギー関連事業を展開するか、具体的な指針を公表する予定だ。

脱炭素時代に三菱商事が適応できるか否かが問われている。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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