三菱商事「ベトナム石炭火力」をめぐるジレンマ

投資家から厳しい視線、大手商社「脱炭素」へ

経済成長に伴い、ベトナムの最大電力は年々増加の一途をたどっている。2020年の最大電力はコロナ禍で前年比ほぼ横ばいだったが、10年前の2.5倍に膨らんでいる。

これに対し、ベトナム南部でベトナム電力公社が計画しているガス火力発電所は、供給元であるガス田開発が遅延。その他の複数の発電所でも設計や土地整備の難航などで新設計画が進まず、需要の増加スピードと比べて電源開発の遅れが目立っている。

ベトナムの電力事情に詳しい海外電力調査会の柳京子研究員は「ベトナム南部の火力電源開発の遅れのため、現地では2021~2025年までの期間に電力需給が逼迫する懸念が高まっている」と指摘する。

日越政府肝いりの石炭火力発電事業

ベトナム政府は節電目標を設定するなど電力需給対策をとっているが、根本的な解決に至っていない。ベトナムは発電電力量の約3割を水力発電に頼っており、雨が不足すれば十分に発電できない懸念もある。隣国のラオスから電力を輸入するなど、電力需給逼迫の回避に向け、懸命の努力を続けている。

ベトナムの石炭火力発電プロジェクトを推進する三菱商事(記者撮影)

こうした状況下を考えると、ベトナムにとって石炭火力発電所は欠くことができない電源だと言える。

ベトナムの石炭火力発電プロジェクトは、日系商社などが推進する案件が多い。丸紅や東北電力などが出資参画するギソン2(出力60万キロワット、2基)は2022年に運転開始とされる。住友商事のバンフォン1(出力66万キロワット、2基)は2019年に着工し、2023年ごろに運転を開始する予定だ。三菱商事が参画するブンアン2を含め、この3案件は2017年6月の日越首脳会談の共同声明で推進を確認した、いわば両国政府肝いりの案件だ。

ただ、三菱商事は同時にCO2排出抑制の取り組みも進めており、発電分野におけるアンモニアの活用を検討している。アンモニアは水素含有量が高く、燃焼時にCO2を出さない。生産時に生じるCO2を回収して地中に埋めるCCS(CO2の回収・貯留)を活用。このCO2フリーアンモニアを石炭火力発電所で石炭と混ぜて燃焼することで低炭素化を進める。

具体的には、インドネシアで将来、CO2フリーアンモニアの生産を始める考えだ。3月18日には、三菱商事が出資するインドネシアのアンモニアメーカー・PAUなどとCCSに関する共同調査について覚書を締結した。インドネシア国内にあるPAU社のアンモニア製造拠点などを活用しつつ、CCSでCO2を処理してCO2フリーアンモニアをつくる。

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