現場知らない「コロナ専門家」への違和感の正体 200人超のコロナ患者治療した感染症医の疑問

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取材に訪れた3月中旬、埼玉医科大学総合医療センターの新型コロナのワクチン接種が行われていた。接種会場の入り口で、まず眼についたのはAED(心停止の際に電気ショックを行う医療機器)。アナフィラキシーショックに備えて用意されたらしい。

岡教授は左腕のアンダーシャツを肩までまくり上げて、イスに座った。注射針が、柔道で鍛えた筋肉質の上腕部に刺された。深さ約2センチ。ワクチンの接種はあっけなく終わった。

「言われているほど、痛くなかったです。インフルエンザのワクチンと変わらないですね」

接種直後は、にこやかに話していた岡教授だが、数時間経つと少しだるさを感じてきたという。翌日に筋肉痛もあったそうだが、接種から3日後にはすべて回復して、仕事には差し障りなかったようだ。どのようなワクチンも一定の副反応がある。それでも冷静に判断すると、患者と日々接する医療者にとってはリスクよりもベネフィットのほうが大きい。

首都圏の緊急事態宣言解除にあわせ、政府は今後の対策として、「ワクチン接種の推進」「医療提供体制の充実」など、5本柱を掲げている。ただし、今年6月までに全国民分のワクチンを確保する計画だったが、現在は白紙の状態になっている。

先月、筆者はコロナに感染してホテルで療養生活を送った。その間、せきや咽頭痛などの症状に苦しんだが、医師の診察は受けられず不安を覚えた。

重症化する初期の急変を見逃すな

実際に自宅やホテルで療養中の軽症患者が、急変して亡くなったケースが相次いだ。

ただし、現時点では軽症患者の重症化を防ぐコロナの治療薬は日本で承認されていない。前述のとおり、アビガンやイベルメクチンなどの候補はあっても、明確な有効性が確認されていないからである。

だからといって、何も打つ手がないわけではない。岡教授は現実的な解決策を提示した。

「新型コロナは発症から1週間ほどで、急激に悪化するケースがありますが、この変化をいち早くキャッチできれば、命を救う可能性が高まるはずです。現在は保健所の職員や看護師が、自宅やホテルの軽症患者に電話で体調確認をしていますが、微妙な変化を見極めるのは難しい。呼吸機能が低下しても、自覚できないのがコロナだからです。

この軽症患者フォローを、かかりつけの開業医の先生たちが担当してもらえると、早期発見が可能になる。つらい症状があれば、緩和するような処方もできるでしょう。的確に診断し、重症化をしっかり見抜いて病院へ紹介する仕事は、かかりつけ医の大切な業務ではないでしょうか」

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