現場知らない「コロナ専門家」への違和感の正体 200人超のコロナ患者治療した感染症医の疑問

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一方、開業医が中心となっている東京都医師会は、3月の定例記者会見で第4波に備える対策として、驚くべきプランを公表した。未承認薬のイベルメクチンを、PCR検査陽性となった自宅療養の軽症患者に投与、重症化を予防するというのだという。

これに対して岡教授は──

「治療薬がないから診られない、というのはおかしい。厳しいことを言わせていただくと、今でも医師の中には風邪に抗生物質を出している先生が少なくありません。これは大部分が適切とは言えない処方で問題になっていますが、何か薬を出さないと治療にならないという固定観念に囚われているからでしょう。同じく、効果があるかわからないアビガンやイベルメクチンが処方できれば解決する問題ではありません。

そもそも8割は軽症で自然に治る感染症ですので、軽症患者への投薬は慎重であるべきです。仮に副作用がなくても広く処方されると、イベルメクチンが有効な寄生虫治療に足りなくなる事態にもなりかねません。

重症化した場合、コロナの治療薬は、ステロイド剤のデキサメタゾンとレムデシビルが、すでに承認されています。現代医療の基本であるEBM(evidence based medicine:科学的根拠に基づく医療)では、質の高い臨床試験の結果が出てから使用するか判断するべき。もっと冷静に対応してほしいですね」 

強い感染力が世界中で問題となっているコロナの変異株が、日本国内でも拡大していることが確認された。これについて、どのように向き合うべきなのか、岡教授に尋ねると、苦笑いしながらこう答えた。

変異株も基本的な対応は変わらない

「最近、あるニュース番組が変異株について取材に来ましたが、それでは面白くないので企画にならないと、ボツになったようです。

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私の答えは、コロナの変異株の調査や研究は大切ですが、基本的な対応はあまり変わらないということ。これまでの感染対策を忠実に実行することが大切であり、ワクチンは極力接種するべきでしょう。治療も今のところ変わりはありません。

新型コロナでは、感染症の専門医が不足していることが明確になりました。実は医学部で感染症科の講座がないところもあるのです。専門医を育てるには約6年間必要になるので、長期的な改善策の1つとして必ず取り組んでほしい」

岩澤 倫彦 ジャーナリスト

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いわさわ・みちひこ / Michihiko Iwasawa

1966年、北海道・札幌生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。2016年、関西テレビ「ザ・ドキュメント 岐路に立つ胃がん検診」を監督。2020年4月、『やってはいけない、がん治療』(世界文化社)を刊行。近著に『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。

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