そんな中でのワクチンの登場は希望の光だと、みんなが思い始めている。接種が始まった昨年末ごろは、私の周りのイタリア人たちはみんな口を揃えて「1年足らずで開発したワクチンなんて、怖くて絶対しない!」と言っていたし、私もそう思っていた。でも今は、ワクチンを接種しなければコロナは終わらない、と多くの人が考え始めているようだ。テレビでは連日のように、高齢者がワクチンを受け、「うれしい」「国のために誇りに思う」などとインタビューに答える姿や、イスラエルではいかにワクチン接種が進んで、元の暮らしが戻ってきているかが放映されている。こういうのをマインドコントロールというのではないか?と思わなくもない。
集団免疫の獲得のため、政府は9月までに国民の80%にワクチン接種を実施するという計画を発表しているが、実際には接種は遅々として進まないうえに(12月27日に始まったワクチン接種は、3月18日の時点で全国民の4%しか二度目の接種が済んでいない)、3月の上旬にアストラゼネカのワクチン接種後に死亡したケースが欧州内で続出し、多くのイタリア人を震え上がらせた。死亡事故発生直後には何千人もが接種の予約をキャンセルするという事態も発生。他の欧州諸国と同様、イタリアでも使用が一時ストップされた。
だが安全性の検証を行ったEMA (欧州医薬品庁)が18日、「アストラゼネカのワクチン使用後に起きた血栓症は、ワクチン接種をしないで起きるケースよりも少ない」というコメントを出し、安全性に太鼓判を押した。19日にはイタリアでもアストラゼネカの使用が再開されたが、接種会場に到着して自分がアストラゼネカを接種されるとわかると、帰ってしまう人もいるらしい。ワクチンを接種したら夏にはもうバカンスに行けるのでは?と楽天的な計画を立て始める人がいる一方で、まだ1年ぐらいは無理だろうという悲観派も多い。
4月の復活祭には全国がロックダウン
カトリック教徒にとって、実はクリスマスよりも大切な行事であるといわれる復活祭(今年は4月4日)の期間中には、人が集まって祝うのを避けるため、イタリア全国がロックダウンになることも決まった。1年前の復活祭もロックダウンの真っただ中で、盲目の世界的オペラ歌手、アンドレア・ボチェッリが誰もいないミラノのドゥオーモで世界に向けて歌い、涙を誘ったのを思い出す。
死者が10万人を超えてしまったイタリアは、3月18日をコロナ犠牲者の日と定めた。第1波で感染の目玉となり、地元に埋葬場所がない棺を軍のトラックが運び出す映像が世界中を震撼させたロンバルディア州ベルガモで、メモリアル式典が行われた。参列したマリオ・ドラギ首相が「頭を上げましょう、再出発の時です」と国民を鼓舞すると同時に「健康弱者が正しい治療を受けられず、保護されない、そんなことはもう二度と起きないことを約束します」と演説した。
大きな期待を背負って登場した超エリート首相ドラギ。コロナ対策にばかりかかりきりになることなく、イタリア経済の立ち直りにその手腕を存分に発揮してくれることを、イタリア全国民が願っている。
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