起業は「スモールメリット」の働く事業がいい訳 保険の営業や人材紹介エージェントなどが好例
ビジネスを行うときに見逃せないのが、当然、種銭の大きさの効果である。
種銭がデカいことの効果は非常にシンプルで、例えば自動車会社を作ろうと思うと、工場から含めて数千億円という巨額の資金が必要で、結果としてグローバルで見ても数十社というオーダーに競争相手が限定される。
つまり、資本が大きければ大きいほど、参入できるプレイヤーが限定され、結果として競争相手の数が減るわけである。
また、製造業においては多くの場合、投下資本量によって工場がどの程度効率化できるかが決まる。すなわち、資本の量が決定的な競争優位の要因になることが多いのである。
単純に説明すると、これがスケールメリットである。
その反対もある
一方、スモールメリットというのも存在する。
例えば人材紹介エージェントは、1人の凄腕エージェントが成約報酬200万円×20人で年間4000万円の売り上げを立てることは可能である。このエージェントが、本社機能を作らずに、自宅マンションを本社としてビジネスを行っていけば、4000万円がほぼまるまる自分のポケットに入るわけである。
しかし、この会社を組織化し、本社機能を作るとする。たいてい、雇い入れるエージェントは本人よりもかなりランクが落ちるエージェントである。当然、人件費のほかに、指導にかかる時間、オフィス費用、PCなどの備品費用などが増大し、基本的に利益率は逓減するモメンタムが働く。
つまり、個の力で食べていくことができる類のビジネスは、強いプレイヤーが1人で個人商店として営業するのが一番効率がいいのである。これがスモールメリットだ。
ベンチャーを興すとき、商売を始めるとき、あなたが大富豪の息子でもない限り、基本的には資本がほぼゼロという状態からスタートする。
その場合、スケールメリットではなく、スモールメリットが働くビジネスを行うのが原則なのである。
ハイクラスの人材紹介エージェントでは、採用される人材の年収の30〜35%程度を人材紹介料として支払うのが一般的である。求職者の獲得から企業への紹介まで、個人のスキルに依存する部分が多く、大手で修業した人が独立することも多い業態である。
保険の営業や、人材紹介エージェントなど、①個人で営業することができ、②仕入れの支払いが後払い可能/無料、③1件あたりの成約単価が高いビジネスは、その性質上、凄腕営業マンが1人で独立する形で成功することが多いビジネスである。