ブラピ映画で脚光「野球の統計学」常識覆す凄さ 新たな戦い方をもたらした分析手法を解説

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セイバーメトリクスの登場は、スポーツバーでドラフトビール片手にフライドポテトを食べながら語る熱狂的なベースボールファンに新たな野球の楽しみ方を教えてくれた。日本でも少しずつだが、居酒屋で酎ハイ片手に焼き鳥をつまみながら語る生粋の野球ファンがデータについても語り始めているようだ。

一方、現場ではセイバーメトリクスのおかげで、ドラフト前のスカウト陣の熱を帯びた議論が減ることになるかもしれない。それは、エビデンスを基にした分析がベースなので、感情が入る余地が減ってしまうからだ。

セイバーメトリクスの登場は、エビデンスを逆手に上から目線のシステマティックな決定事項を促進させているかのように感じるかもしれない。しかし、それは決して権威的な話ではない。

1球ごとに何が起こったか丁寧に記録する。1年間ヒットを打つごとに得点結果がどのように変化したかを詳しく観察し、結果を平均化する。そうした作業を通して、そのヒットにはいったいどれくらいの価値があったのかを測る。セイバーメトリクスで考え出された指標もそこで使われるデータも、間違いなく野球を少しでもよくしたいと考える情熱の産物だ。

勝利にどれだけ貢献したプレーかを評価すべき

2019年にNPBでは1万0102回のヒットというプレーが起きたことにより、得点期待値が4481点分向上した。つまり、ヒット1本を打つごとに0.44点分得点期待値が高まったことになる(4481点÷10102回=0.44点)。本塁打は1688本打たれた結果、得点期待値2344点分向上した。ホームラン1本ごとに1.39点分の得点期待値を高めたことになる(2344点÷1688本=1.39点)。

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逆に、凡打は2万6776本あり、そのプレーは得点期待値を6601.9点下げた。凡打はアウトカウントを増やすプレーなので、得点価値に対してマイナスに作用するので、凡打1本ごとにマイナス0.25点得点価値を減少させてしまう(6601.9点÷26776回=-0.25点)ことになる。

このように、プレーごとで得点にどのような変化が起きたかを見ることで、異なるプレーであっても、そのプレーが何をもたらしたかという価値の比較を行うことが可能となる。

野球をはじめとするプロスポーツの大きな目的の一つは勝利である以上、選手が行うプレーは、勝利のためにどれだけ価値のあるプレーだったのかという視点で評価されるべきだ。試合ごとの勝敗も、シーズンを通したリーグ勝者への道も、得点と失点の差によって決まるので得点期待値を上げるプレーを評価し、下げるプレーは評価するべきではない。

ピタゴラス勝率と得点期待値を関連付けて考えることによって、プレーがどのように勝利に影響を与えているかを評価することが可能になった。これがセイバーメトリクスを使った戦術や選手評価の土台になっている。

森本 美行 fangate代表

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もりもと みゆき / Miyuki Morimoto

1961年生まれ。1992年米ボストン大学経営大学院でMBAを取得。2000年米国NASDAQで上場したasiacontent.com日本法人アジアコンテントドットコムジャパンの代表取締役兼CEO。2002年スポーツデータ配信や分析を行うデータスタジアムの代表取締役に就任。2016年には、日本初の野球独立リーグ四国アイランドリーグplusを運営するIBLJの代表取締役および日本独立リーグ野球機構の常務理事を務める。現在は、スポーツビジネスコンサルティングを行うfangateの代表取締役を務めるとともに、教育、研究、指導、ビジネスと多岐にわたり、様々な面からスポーツをサポートしている。

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