ブラピ映画で脚光「野球の統計学」常識覆す凄さ 新たな戦い方をもたらした分析手法を解説

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野球でのデータ活用はブラッド・ピット主演『マネーボール』で広く知れ渡った(写真:UPI/アフロ)
スポーツの世界でも重要度を増しているデータ分析。その中でよく知られるのが、ビル・ジェイムズ氏が提唱し、メジャーリーグ、オークランド・アスレチックスのGMだったビリー・ビーン氏が活用した「SABR METRIX(セイバーメトリクス)」だ。ビーン氏を主人公に描いた、2011年に公開されたブラッド・ピット主演の映画『マネーボール』で、セイバーメトリクスは多くの人に知れ渡った。
では、その中身はどういったものか。元データスタジアム社長で、スポーツデータ分析の専門家である森本美行氏が、新著『アナリティックマインド』を基に解説する。
前回:Jリーグに「補強苦手なクラブ多い」残念な理由

ピタゴラス勝率が上がると実際の勝率も上がる

対戦相手がいる球技スポーツにおいて勝利するための条件は、相手を上回る得点を奪うことだ。当たり前だが、相手チームの得点より上回れば100%勝つことになる。

そしてプロスポーツのリーグ戦の順位は、1試合1試合の積み重ねで、シーズン終了後の勝率、勝点などで決定される。それでは、試合における勝利の条件、すなわち得失点差で相手を上回ることはシーズンを通した戦いにおいての順位、勝率においても勝利をもたらすのだろうか?

その問いは、ビル・ジェイムズによって考え出されたピタゴラス勝率という計算式によって説明される。ピタゴラス勝率とは、得点の2乗÷(得点の2乗+失点の2乗)によって算出されるもので、得失点差が広がれば広がるほど実際の勝率が高くなるという相関係数の高い式になっている。

(画像提供:東洋館出版社)

この式から、ピタゴラス勝率が上がると実際の勝率も上がることが見て取れる。つまり1試合レベルで得失点差を上回ると勝ちになるが、それはシーズン単位で見ても同じだとわかる。得失点差が多ければ多いほどシーズンの勝率が高くなり、得失点差が少なければ勝率が低くなる。つまり、大勝ちするが大負けする、勝つときの多くは接戦というチームは得失点差が多くならないので、シーズンを通して良い成績を出すことは難しい。

あらためて、野球ではより多くの得点を生み出すプレーと、失点をより少なく抑えるプレーが重要だということがわかる。

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