ブラピ映画で脚光「野球の統計学」常識覆す凄さ 新たな戦い方をもたらした分析手法を解説
野球は、3回アウトになる前に1塁ベース、2塁ベース、3塁ベースを順番に通過し、最終的に本塁ベースを踏めば得点になる。アウトカウントと、どのベースに選手がいるかという情報があれば、どのような状況が得点に結びついたのか整理して考えやすい。
野球の攻撃は、アウトカウント3種類(ノーアウト、ワンアウト、ツーアウト)×走者状況8種類(ランナーなし/ランナー1塁/ランナー2塁/ランナー3塁/ランナー1塁、2塁/ランナー2塁、3塁/ランナー1塁、3塁/満塁)=24種類あり、それぞれの状況下でどのようなプレーが得点、あるいは失点に結びついたのかを見ることができる。
24種類の状況において、あるアウトカウント、ある塁上の状況から、そのイニング終了時までに見込まれる得点を野球における得点期待値と呼び評価の重要な指標となっている。
サッカーやラグビーの分析の難しさ
一方、サッカーやバスケットボール、ラグビーのように攻守が頻繁に入れ替わり、味方と相手とが入り交じる競技において、確実に得点できる状況を限定し、分析することは不可能だ。唯一言えるのは相手のゴール、リング、ラインに近ければ近いほど得点の可能性が高まるということくらいだ。しかし、ゴールに近づいても、得点を阻止しようとする相手の人数が多ければ得点という目的を達成することが難しくなる。
したがって、野球のように状況を整理した形で得点期待値を算出することができない。サッカーでは、期待を裏切られることが日常化してしまっているせいか、これまでは得点期待値という考えも言葉もあまり聞かなかった。しかし、近年欧州などでもしばらくxG(Expected Goals)というシュートが成功する確率を得点期待値として使われるようになってきた。
ほかにもピッチをエリア分けし、各エリアから打たれたシュート数と実際の得点から算出する方法、体のどの部位(頭、右足、左足、その他など)、タッチ数、ゴールへの距離、角度、シュートまでの経路、時間等のデータをAIを活用して機械学習させ、算出する方法も開発されている。
現状、日本のサッカーではそれほど多くのデータは手に入らない。しかし、入手可能な範囲のデータで合理的に考え、算出を試みることが重要だ。どのようなプレーが得点に繋がり、どのようにプレーすると失点に結びついてしまうのか、コーチングスタッフ、選手、強化、編成などのスタッフが得点に貢献した選手の能力や評価を共有するための共通の物差しを持とうとすることが重要なのだ。
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