プロ野球「全く儲けない異常体質」が許された訳 「ジャイアンツ頼み」のビジネスモデルは限界だ

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プロ野球は、オッサンのスポーツ。そのフレーズが、単に古臭いというイメージを揶揄するものではないことが明確なデータで示されていたのは、2004年(平成16年)の球界再編騒動中のことだったという。

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問題視されていたのは「ファン層の中・高年齢化」だった。球界内でシェアされたデータは、観戦者の7割が男性、さらにそのうちの7割が40代以上。つまり、球場を訪れるおよそ半分は「男性の中・高年齢者層」という驚愕の内容だった。

かつては、その中のさらに熱心な「コア層」と呼ばれるファンだけを相手にしておけばいいといわれたものだった。しかし今や、女性と子供に見向きもされないエンターテインメントが生き残っていけるはずがない。

このままでは会員数“じり貧”のファンクラブ

ここで、西武のファンクラブ会員数のデータを精査してみる。ここにも「中・高年齢化」という問題がじわじわと、着実に迫っていることを示している。まずは、年度別会員数を比較してみよう。

【2008年】
8万2122人

【2020年】
11万3555人

12年間で38%増、年平均でも約2400人の増加は、球団側のたゆまぬ努力の成果であるだろう。ところが、男女別に見てみると、意外な分析結果が明らかになる。

【2008年】
男性77%(6万3000人)、女性23%(1万9000人)

【2020年】
男性71%(8万人)、女性29%(3万3000人)

女性会員の伸びが顕著ではあるが、2020年の時点でもやはり男性会員の比率が7割以上を占めている。

もう1つ、象徴的なデータをピックアップしてみよう。会員数の比率が最も高い、その「ボリュームゾーン」の推移だ。

【2010年】
30代+40代 42%(3万6000人)

【2020年】
40代+50代 41%(4万7000人)

ファンの中心層は、年月の経過とともに、そのまま“移行”しているのだ。今後も、この少子高齢化の社会状況が続いていくことは間違いない。

そうした背景を踏まえ、現状のファンクラブ会員数の伸び方や年齢層から推測すると、近い将来、会員数自体が“じり貧”になっていく恐れは大だ。手をこまねいてはいられない、まさに喫緊の課題なのだ。

喜瀬 雅則 スポーツライター

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きせ まさのり / Masanori Kise

1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大経済学部卒。1990年、産経新聞社入社。1994年からサンケイスポーツ大阪本社で野球担当として阪神、オリックス、近鉄、ダイエー、中日、アマ野球の番記者を歴任。2008年から8年間、産経新聞大阪本社運動部でプロ・アマ野球を担当。『産経新聞』夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。2017年7月末に産経新聞社を退社。以後は、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。

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