日本人の知らない経済政策「PGSを増やせ!」 衝撃の事実!途上国の半分しかない日本のPGS

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支出を増やした場合でも、生産性の向上が狙いではなく、どちらかといえば既得権益を守ることにのみに注力していました。生産性の向上ができない企業でも生き残れるよう、需要創出のためだけに支出を繰り返していたような印象を持っています。

持続性のない需要の刺激策に終始してしまった結果、日本はイタリア、ギリシャ、スぺインなどの国と同様に、生産性の向上ができないまま、借金だらけになってしまいました。

ポイント:景気サイクルを調整するために短期的な政府支出が必要だという主張を否定するエコノミストはいないが、中・長期にわたって政府が常態的に支出を増やし続けることを肯定するエコノミストも、またいない。

先進国の政府支出が大きい原因は社会保障

反対意見5:世界的には、政府支出と生産性の間に相関関係はない

政府支出が大きくなれば、生産性は上がる。そして生産性が高い国ほど、政府支出が多いというコメントをよく耳にしますが、すでに説明したように、この説はものごとを単純にとらえすぎているのです。

世界186カ国のデータを見ると、政府支出と生産性の間に相関関係はほとんど認められません。先進国に絞って見ても同じです。

逆に、政府支出ではなく、国の税収比率と生産性の間により強い相関関係が認められます。さまざまな論文でも確認できますが、生産性が高い国では税収が豊富で、国がそれを活用しているという因果関係があると考えるのが適切だと思います。要するに、税収が大きいからGDPが大きいのではなく、GDPが大きいから税収が大きいというのが正しい因果関係です。

さらに分析をすると、生産性・労働生産性ともっとも強い相関関係にあるのは財政黒字です。この結論は、反対意見3で紹介した論文にも書かれています。

生産性の高い国が税収を何に活用しているかというと、どちらかといえば、社会保障費で、それにより格差を緩和することが多いようです。例えば、「The impact of productive and non-productive government expenditure on economic growth」という論文のデータによると、1990年から2012年の間、高所得の国々のGDPに対する政府支出の割合は40%で、中所得と低所得の国々は26%と大きな差がありました。

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