日本人の知らない経済政策「PGSを増やせ!」 衝撃の事実!途上国の半分しかない日本のPGS

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さらに、借金の比率が90%を超えている国の場合、借金の比率が1割上がると、経済成長率にマイナス0.1%の影響が出ると分析されています。一方、借金の比率が30%以下の国の場合、0.1%のプラスとなります。

特に、借金の比率が90%を超えている国の場合、政府支出の増加は労働生産性に悪い影響を与えると指摘されており、大変興味深く読みました。

数多ある論文に目を通すと、どの論文でもGDPに対する国の借金の比率が90~100%を上回った場合、政府支出の増加は経済成長に対して悪影響を及ぼすとされています。どうしてそのようなことになるか、そのメカニズムと因果関係もしっかりと分析されています。

経済が成長しなかったから借金の比率が増えたのではなく、借金の比率が高くなればなるほど、借金が増えることで経済成長に悪影響が出ることが検証されています(この分析では景気のサイクルを調整しています)。これは私の意見ではなく、エコノミストによる155カ国に及ぶ、38年間分のデータをベースにした、しっかりとした統計分析の結果です。

ポイント:MMTによると、論理的には政府支出を大きく増やすことができるとされる。しかし持続的な経済成長につながらない政府支出は逆効果になるという今までのデータ分析結果をどう考えるべきか、検討が必要。

日本でこれ以上「国の借金」を増やすことはできるのか

反対意見4:今までの日本政府の支出による経済成長の効果はないのでは

残念ながら、日本も例外ではありません。

日本では1990年代から政府支出が大きく膨らんでいます。GDPに対する政府支出は、近年では1990年が最低で13.5%でしたが、2012年には20.3%まで膨らんでいます。しかし、1990年代から、日本が失われた時代に入って抜け出せなくなっているのは、ご存じの通りです。結果として、GDPに対する政府の借金は世界一になりました。

1990年代、私はゴールドマン・サックスでアナリストとして勤務していましたので、当時日本政府が何をやっていたのか、ハッキリと記憶しています。

1990年代の日本政府は、「そのうち経済は回復する」という期待を抱いていたのか、先行投資というより現状維持のため、大きな支出を繰り返しました。何度も税率を下げ、個人消費を喚起しようとしましたが、結局実現できませんでした。

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