日本人の知らない経済政策「PGSを増やせ!」 衝撃の事実!途上国の半分しかない日本のPGS

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しかし、政府支出の中身次第ですが、一般的には政府支出の増加は労働生産性にはプラスにならないとされています。場合によっては、生産性が上がっても、労働生産性が下がることもありうるからです。

なぜ労働生産性が上がらないのか、そのメカニズムを説明します。そもそも労働生産性は名目ではなく、購買力調整後の数字で見るので、インフレが起きた場合、調整されます。

また、労働生産性は、1人の労働者がどのくらいのアウトプットをしているかを見る指標です。労働生産性は、人的資本、物的資本、全要素生産性に分解して理解する必要があります。

1人あたりの労働生産性を見るとき、人的資本は同じ人がどのくらい働くかを測るので、政府支出の増加によってプラスの影響が出るのは残業の増加です。ただ、労働時間には制約があるので、大きな影響を生み出すことはありません。

物的資本は簡単に言えば設備投資です。全要素生産性は、人と設備投資をどの程度上手に組み合わせて活用しているかを測ります。技術力、経営能力、規模の経済、組織力、ブランド力などが全要素生産性として把握されます。

労働生産性が政府支出の増減と単純に連動しない原因は、政府支出の増加がどこまで設備投資と経営者の工夫につながるかにかかってくるからです。後ほどこの論点に戻りますが、とりあえずここで私が言いたいのは、ただ単に政府が予算を増やして、お金をばら撒いても、経済が持続的に成長し始めることはないということです。

ポイント1:政府支出には、設備投資と経営の工夫に直結する「賢い使い方」が求められる。

政府支出が労働生産性を下げるメカニズム

反対意見2:労働生産性は上がらないどころか、下がることもありうる

改めて言うまでもなく、国全体の労働生産性は、各業種の労働生産性をそれぞれの業種で働いている労働者の数で加重平均することで求められます。

業種ごとの労働生産性は、かなり大きくばらついています。そのため、政府支出を増やす場合、全体の労働生産性より低い業種での雇用増を促す支出を増やすと、加重平均する際にその業種の寄与度が高まるので、全体の労働生産性が下がることも十分考えられます。

例えば、日本全体の労働生産性は546万円ですが、医療・福祉分野の労働生産性は289万円です。医療・福祉分野の雇用を増やすような政府支出を増やすと、労働生産性の低い医療・福祉分野の労働者の構成比が増えるので、この分野での労働生産性がそのままの場合、全体の労働生産性が下がってしまうのです。

労働生産性の低下は、通常、労働参加率の上昇分を上回るほどの悪影響は生じないので、労働生産性が下がっても、生産性は上がります。先の例で労働参加率が50%から60%まで1.2倍に増加した場合、1000万円の労働生産性が833万円(=1000万円÷1.2)まで低下しないかぎり、生産性は上がります。

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