前国連大使に聞く「SDGsを追い風にする思考法」 起業家の社会課題解決力を成長エンジンに

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実際に民間企業とベンチャー企業の事業提携は増えています。その一方で、なんとなくベンチャーと組んでいるケースも見受けられます。それではうまくいくはずはありません。そこで重視すべきことは、ベンチャー企業の新しいアイデアや事業を「テコ」として、民間企業が本来持っている資産の価値を最大化させることです。この掛け合わせがうまくいくと、民間企業とベンチャー企業双方が活性化されます。

星野:「クリティカル・マス」という考え方があります。ある臨界点を超えると、一気に世のなかが変わっていくという概念です。ベンチャー企業が急先鋒として動いている部分を、民間企業と組むことで大きなうねりに変えていく。そして、臨界点まで押し上げる。その際の共通言語がSDGsになりそうですね。ベンチャー企業も、民間企業も、同じ未来を生きる仲間ですからね。

つながりの質を向上させることが大切だ

服部:そのためには、民間企業とベンチャー企業をつなげるだけではなくて、つながりの「質」を向上させる必要があると思います。SDGsを自分ごとである「我」から、みんなに当事者意識を持ってもらう「我々」にすることが大切なのです。

服部結花(はっとり ゆか):2004年にリクルートに入社。同社を退社後、2011年にインクルージョン・ジャパンを設立。

VCは民間企業などから資産をお預かりして、今後の社会に貢献しうるベンチャー企業の目利きと、投資・支援を行っています。例えば私たちの会社では、SDGsやESGの観点を重視しているベンチャー企業に投資することを意識しています。投資をする際には、つねに「このベンチャー企業と、あの民間企業が協業することで、世のなかが大きく動きそうだ」という仮説を持つことが重要です。そうして実際に多くの新規事業開発に携わっています。

今後、民間企業とベンチャー企業が協業する選択肢として、民間企業がベンチャー企業へ出資し、株主として同じ未来を目指すことが、もっと一般的になっていくはずです。株主としての深い関係を持ち、運命共同体になるわけですね。SDGsにおける「クリティカル・マス」を超えるためにも、深く、質の高いパートナーシップの確立が重要であると改めて感じました。

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