前国連大使に聞く「SDGsを追い風にする思考法」 起業家の社会課題解決力を成長エンジンに
服部:星野さんはすでに成熟した民間企業を中心にお話をされていましたが、新しい技術を有したベンチャー企業もSDGsを実行する存在として、もっと注目されていいと思っています。起業家はSDGsという言葉そのものは使いませんが、企業の根本に「社会課題を解決したい」という思いがあります。その強烈な思いに共感して、人材や資金が集まり、企業は成長していくのです。
「こうあるべきなのに、そうなっていない」、言い換えると、理想的な世界が見えているのに、現状が追い付いていない。さらに、その間を埋めようとする人がいない。こうした状況に対して、ベンチャー起業家は「誰もやらないならば私がやる」という圧倒的な当事者意識があります。そこに、私たちVCも同じ未来を実現したいと感じ、投資を決断します。
SDGsを意識していなくてもターゲットが重なる
ベンチャー企業が理想からバックキャスティングしながら現実を一歩ずつ変えていくのは、SDGsが提唱する方法論そのものです。起業家が持つ社会課題を発見する力、未来を描く力は、SDGsの本質と非常に近いようにも思います。
今の起業家は、民間企業で一定程度の期間働いた経験のある人が多くなりました。業務を通じて、産業構造に対して違和感を覚え、自分の手で歪みを正したいと思い起業に至った人も多いです。そうした「憤り」に近い感情から生まれた起業家の事業アイデアは、社会をよりいい方向に導く力を持っています。SDGsを意識して起業したわけではなくても、事業内容がSDGsのターゲットと重なっていることは非常に多いように感じます。
星野:なるほど、それはおもしろいですね。もしかすると、SDGsという概念を知ることによって、自分たちが行っている事業の正当性や方向性を、より明確に説明できるようになるかもしれませんね。
服部:はい。まだ兆しかもしれないのですが、自分たちの事業のなかにあるSDGs的な側面に気づくことによって、自らの存在意義を再認識している経営者もいますね。このポイントに気づけると、そのベンチャー企業が成長することで、経済にも社会にもインパクトを生み出すことになります。いかに経済性と社会性を両立させたビジネスを生み出すか。それが私たちに課せられた使命でもあります。
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