V6解散で可視化されたジャニーズ「世代間断層」 ジャニーズ一強時代の終焉と加速する世代交代

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繰り返すが、テレビの世界を中心に活躍した上の世代の存在があってこそ、今日のジャニーズの隆盛もあったことを忘れてはならない。しかしだからこそ、テレビ時代を代表する“安心感”の象徴だったV6の今回の解散発表は、想像以上に大きな意味合いを持つ出来事でもあるだろう。

それは、先ほどふれた1990年代メジャーデビュー組に起こった相次ぐ転機と併せ、「ジャニーズ一強」で推移してきたここ数十年の男性アイドルの世界が大きく変わるひとつの兆しに見えなくもない。

V6というグループは、どこが稀有だったのか

ただ、いずれにしても、V6自身は少しも変わらなかった。

かつてリーダーの坂本昌行は、「この6人はまとめようと思っても、まとまらないな」「むしろ僕の言葉でまとまるようでは、つまらないグループになっちゃうな」と思ったという(『サンケイスポーツ』2014年12月27日付記事)。

おそらくその思いは、坂本ひとりのものではなく、6人全員のものだったに違いない。実際、V6のメンバーは、舞台に、映画・ドラマに、バラエティ・情報番組、そして番組MCにとそれぞれ活躍する多彩な才能の持ち主だ。いわば、みな個性の塊である。

そのことを踏まえ、坂本昌行は、グループのために個々の可能性を狭めてしまうのではなく、個々の可能性の実現があって初めてグループは魅力的なものになると考えた。そのバランスを保つのは、言葉で言うほど簡単なことではない。むしろ至難の業だろう。

だがV6は、個々のメンバーとグループの絶妙なバランスを長年保ち続けることができた稀有なグループだった。ジャニーズ事務所の発表のなかにあった「この6人でなければV6ではない」という言葉は、そのことを物語る。

しかしその絶妙なバランスは、ある意味諸刃の剣でもある。メンバーの誰かが自分の次なる可能性を真剣に考え始めたとき、そこには解散という選択肢がぐっと現実味を帯びることになるからだ。

もちろんそれは、ファンにとってそう簡単に受け入れることのできないことだろう。また、テレビで彼らにずっと楽しませてもらってきた視聴者にとっても同様だ。

だが「この6人」が歩んできた25年余りの足跡は、解散で決して色あせるものではない。そして彼らの歩みは、まだこれからも続いていく。まずは、11月1日に向かって彼らがグループとしてどのようなゴールを迎えるのか、見守りたいと思う。(文中敬称略)

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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