「施設から自立する人」に送る専門家からの助言 施設出身者による「当事者活動」の何が問題か
(1)支援者自身に課題がある
当事者団体の主催者には元施設職員が運営しているものがいくつかあります。なぜでしょうか。それは「かわいそうな子どもをお世話する私ってすごいでしょ、みんな見て、私に注目して」という承認欲求のみで就職する人がいるからです。実際に仕事をすると子どもはかわいいときばかりではなく、ひどい悪態をついたりして職員がストレスを感じることは多いです。しかしそれを理解できずに、「私がこうやって頑張っているのに……」「施設が悪いんだ、社会が悪いんだ」と責任転嫁するのです。
過去記事(「被害者支援」を軽々しく口にする人たちの特徴)も見ていただきたいのですが、「熱意があり能力がない→実践してしまい悪影響を与える最も害悪」な事例になるのです。ほかの分野に行けばいいのに、「何もできない子どもを支援する私って素敵」の思想から脱却できず、かといって子ども領域で働くスキルもなく、社会を変えようと手っ取り早く支援者の立場になるのです。
「当事者を助けたい」という前にまず「あなた自身を助けましょう」という方が多すぎます。薬物プログラムでもよほど自分に向き合わないと到達しないし、苦しみながらも自分を振り返って乗り越えて、初めて支援者側に回ることができるのです。回復していない方が支援をしても、うまくいくはずがありません。
これら課題がある方の常套句は、「あなたは悪くない、施設が、児相が、社会が悪いんだ。一緒に社会を変えよう」です。
自分の体験を話すことが快感に
(2)過度な承認欲求依存とその影響
「すごい体験をしたんだね、ぜひお話聞かせて」。甘い言葉でトラウマや被害者支援のスキルがない人が心をえぐる体験を聞き出します。つい話してしまうと、賞賛の嵐を受け、快感になっていきます。はやし立てられて、話を盛る人も少なくありません。より注目されるよう話はどんどん過激になります。
またネットに自分の出自が許可なく掲載され、その後苦しむ人も少なくありません。支援団体はそのような方に寄り添って伴走するのではなく、また新たな当事者探しに向かいます。
またせっかく続けてきた仕事をやめて当事者活動を始める!という方も少なくありません。これが大きな課題になりつつあります。一時の高揚感で決定をし、当事者団体周りは称賛をする。うまくいけばいいのです。うまくいかないとき、周りはさっと引いていきます。頼みの綱の出身施設も、その施設を攻撃し続けていたあなたは足を運びにくくなり、孤立していきます。
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