「施設から自立する人」に送る専門家からの助言 施設出身者による「当事者活動」の何が問題か

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日本における「当事者」と「支援者」の現状(写真:chee gin tan/iStock)

さまざまな事情で親と暮らせない子どもたちが育つ場所である社会的養護(施設や里親が該当します)から、今年も進学や就職で子どもたちが旅立ちます。その子どもたちの自立を妨げかねない「社会的養護出身者による当事者活動」について問題提起します。

「依存症回復プログラム」とは?

まずは、薬物依存者に対する回復プログラム12ステップを受けた高知東生さんのツイッターでの発言を見ていただきたい。

「俺は12ステッププログラムで救われた。これは、世界で最も依存症者を救ったプログラムで、自分の問題を認めて、過去を正直に振り返り、可能な限り埋め合わせをする。そして今度は仲間を助ける側に回るというもの」

「依存症回復プログラム」については、自身も実践者の1人である公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子氏から貴重な意見をいただいた。

「明らかに課題がある人が支援者と称して、『依存症の人の役に立ちたい』と言ってくることがあるのですが、自分よりかわいそうな人、ダメな人の世話をすることで『自分は大丈夫』と安心したいのだと思います。依存症のピアサポート(同じような立場の人によるサポート)は完全に横並びの安全かつ安心できる信頼関係の中で行われ、つらい回復プログラムを乗り越えるために支え合うことで当事者がエンパワメント(能力開花)されていくというものです。知識も経験もない人にいきなりできるわけがありません。『まずあなた自身が自分の問題から回復してください』と言いたくなります。自分に向き合う力がない人は、人にも真剣に向き合うことなんてできないですよね」

社会的養護出身者が社会的養護をよりよいものにするために行う活動に「当事者活動」があります。海外では当事者が団体を作り、しっかりとした調査などを行い、政策提言することも見られます。しかしながらわが国の当事者は事情が違うようです。

薬物であれ虐待であれ、回復プログラムなど自身の変化を求めると、必ず自分と向き合う場面に遭遇し、それができない(ほど重大なトラウマ)ならば、プログラム以前に治療や静養による回復などが必要です。この前提をもとに、当事者活動についての課題を提起します。

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