コロナで目算狂った人々を襲う修羅場のリアル 自粛や需要構造変化などに伴う苦境を脱せるか

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ガチョウの肝臓であるフォアグラはもともと冷凍した状態で輸入するため販売時期が遅れても値崩れしにくい。キノコ類のトリュフも収穫段階で生産量を微調整することは可能だ。難しいのは、チョウザメの卵巣をほぐして塩漬けにしているキャビアの扱いだった。

「キャビアは冷凍保存ができず、長期間手元に置いておくことができない。生産者も5年前から仕込んでいるから生産を止められない。われわれ、中間業者が購入しなければ生産者は収入がないままコストだけが膨らんでいく」(レーモン社長)

キャビアの在庫が増えて頭を抱えるファイユジャパンのレーモン社長(撮影:野中 大樹)

生産者は生産を止められず、エンドユーザーであるホテル・レストランも購入を控える。結果、ファイユジャパンのような中間業者の在庫が重くなっている。

2020年12月期は上期、緊急事態宣言で落ち込むも夏から秋にかけて挽回したため売上高は前期比70%程度にとどまった。だが、今期は序盤から2度目の緊急事態宣言が発出されただけでなく、主力商品のキャビアでダンピングまがいの動きが起きている。先日、得意先から「御社の半額で売ると言ってきているインポート業者がある。こちらの価格に合わせられないか?」と問われ、レーモン社長は頭を抱えた。今期の黒字化は絶望的な状況だ。

コロナ倒産を業種別に見ると飲食業が圧倒的に多いが、週刊東洋経済3月13日号でまとめたところでは、ファイユジャパンのような「食品卸」も5番目にランクインしている。

オンライン普及のジレンマ

「BtoB」の観光業、MICEビジネスも岐路に立たされている。

MICEとは企業や団体の会議(Meeting)、研修旅行(Incentive Travel)、国際機関や学術団体が行う国際会議 (Convention)、展示会やイベント(Exhibition/Event)の頭文字をとった造語で、政府も大型MICE誘致をインバウンド・観光戦略の1つに位置づけている。

伊勢志摩サミット(2016年)やアジア開発銀行年次総会(2017年)、G20大阪サミット(2019年)の運営を受託してきたコングレ(東京・中央区)は、昨年4月の緊急事態宣言以降、受託していたMICEの中止・延期が相次いだことで痛手を被った。2021年3月期の売上高は前期比70%程度を見込む。

だが、この前期比70%という数字には含みがある――。赤字に転落したとはいえ売上高を3割減にとどめることができたのは、予定していた会議の一定割合をオンライン開催、もしくはリアルとオンラインの同時開催(ハイブリット開催)に切り替えることができたからだ。

オンライン開催の頻度と充実度の向上はMICE業界共通の課題だが、ジレンマもある。ある場所に一定期間、大勢の人が集まることによる経済効果は小さくなく、国の地方創生策にも合致するなど、地方都市を巻き込んだMICEビジネスの隠れた戦略だった。

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