コロナで目算狂った人々を襲う修羅場のリアル 自粛や需要構造変化などに伴う苦境を脱せるか

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コングレの武内紀子社長は「オンライン開催へのシフトが進めば、これまで以上にリアルで開催する意味が問われてくる。そのほかに何日間も滞在する意義を参加者に感じてもらえるか。オンラインに負けないコンテンツを提供できるか。コロナによって、MICEビジネスは大きな課題を背負うことになった」と語る。

コロナがもたらした消費構造の変化と格闘している地域もある。日本最大級の繁華街・銀座だ。

新宿とも六本木とも違う風格をたたえてきた銀座だが、コロナでその地盤が揺らいでいる。それまで圧倒的に多かった社用族(企業の接待や社交の場として使う人々。費用は個人ではなく企業の経費として落とされる)がぱったりと消え、閑散としてしまっているのだ。

もうお客さんを待っていても仕方がない――。そう腹をくくり、攻めの姿勢に転じ始めたのは「銀座料理飲食業組合連合会」。3月3日10時過ぎ、銀座一丁目にある炭火焼 洋食バル「Bistrot&Bar 日東コーナー」の店舗には正装した配送スタッフが待機していた。紺のブレザーに銀色のネクタイを絞めたスタッフは、箱詰めされた料理を丁寧に受け取り、大田区の住宅街へとゆっくり車を走らせた。

銀座料飲組合がこの3月から始めたのが「美味しい銀座デリバリー」。銀座の料理店で作られた弁当を配送するサービスだ。コロナ禍の外食産業ではすでにウーバーイーツや出前館などEC飲食がひろく普及しているが、銀座デリバリーの特徴は単に空腹を満たすための食べ物を運ぶわけではないという点にある。

配送スタッフは座学と実演の研修を受け、お辞儀の作法から言葉の使い方まで習得したうえで現場に立つ。注文を受けるのは5000円以上で、ウーバーイーツなどと比べると割高だが、その分「銀座らしさを届ける」ことに注力する。

研修を受けた配送スタッフに弁当を託す日東コーナーの竹田大作社長(撮影 一井純)

コロナ前の消費構造には戻らない?

銀座デリバリーを発案したのは、土佐料理・祢保希(ねぼけ)の竹内太一社長や日本料理「穂の花」を経営する白坂亜紀社長ら料飲組合の理事たち。この構想に地元中央区の物流会社・八大の岩田享也社長が応え、今年1月から急ピッチでシステムを作り上げた。

組合リーダーたちの根底にあるのは「緊急事態宣言が解除されても、コロナ前の銀座には戻らないかもしれない」という危機感だ。この読みは当たっている可能性が高い。

消費動向調査ナウキャストの「JCB消費NOW」などをベースに、人出と消費の関係を調べている野村證券金融経済研究所経済調査部シニアエコノミストの水門善之氏は「人々の消費スタイルに変容が起きている。緊急事態宣言が解除されて人出が戻ったとしても、消費がコロナ前の形に完全に戻ることはないだろう」と分析する。EC消費は定着しつつあり、ワクチン普及などでコロナが脅威ではなくなったとしても、コロナ前の消費スタイルがそのまま復活するとは考えにくいのだ。

コロナで大きなダメージを受けている外食や外食卸、旅行・観光業者は、緊急事態宣言が一日でも早く解除されることを望んでいる。しかし、解除後にコロナ前の経済が戻ってくる保証はない。

そのときこそ、コロナ倒産が本格化するときかもしれない。

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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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