ヤフーLINE統合、EC・金融で見据える「勝ち筋」 川邊・出澤両トップがコロナ禍で抱いた危機感

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ヤフーの川邊健太郎社長(左)、LINEの出澤剛社長(右)がZホールディングス(ZHD)でCo-CEO(共同最高経営責任者)を務める(撮影:梅谷秀司)

――統合方針の発表から1年4カ月、社会情勢や競争環境が激変しました。

川邊健太郎・Zホールディングス社長Co-CEO(以下、川邊):コロナ禍で世界が大きく変わってしまった。統合に対する思いもコロナがあって大きく変わった。僕個人としても、新たな使命感を抱くに至った。

自分たちなりにこの20数年間、インターネットの技術を使って世の中を便利にしてきたつもりだったが、非常に限定的だったと。こういう世界的な危機を迎えて、情報技術を使ってやれることがもっとたくさんあったのだと気づいた。

とくに行政、教育、医療など「対面」を重視して来た領域。エッセンシャルワーカーの方々も、もっとIT化、ロボティクス化が進んでいれば苦労が減っていただろう。われわれの働きかけが足りなかったのだと、忸怩(じくじ)たる思いを抱いた。統合を経て何か、新しいサービスやソリューションを通じて日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めて行きたい。目配せしなければならない領域がものすごく広がった。

統合後の方向性がよりシャープに

出澤剛・ZホールディングスCo-CEO(以下、出澤):LINEの誕生のきっかけが東日本大震災だったというのもあり、防災などに貢献したいという思いはもともと強かった。実際、地震や台風などの災害時にはコミュニケーションインフラとして頼りにされていると感じているし、コロナ禍でもLINEを通じたコミュニケーションの量は増えている。

このコロナ禍において、これまでDXが進んでいなかった領域も変わり始めている。「やっぱり対面がいいよね」と思われていた部分も一気にそうはいかなくかった。そこがある種、諸外国との差分だったわけだが、世の中一気に「テックを取り入れないと」というふうになってきた。こうした環境変化を先日(3月1日)発表した統合後の戦略にも反映している。方向性が大きく変わったのではないが、よりシャープになったという感覚。

――もう1つの構造変化として、米中テック企業間の摩擦が急速に進んだことも挙げられます。2019年の記者会見ではGAFAとの戦いを念頭に置いた戦略も語っていましたが、この部分で考え方は変わりましたか?

川邊:TikTokはアメリカではまだ使えるけど、インドでは使えなくなったり、いろいろな断絶が進んだと実感する。普段使っていたものがある日突然使えなくなったら消費者だって困る。もともと「インターネットにもうひとつの選択肢を」とか「米中に次ぐ第三極が必要になる」という意志を持って統合を発表したわけだが、まさに今、そういった存在があってしかるべき世界情勢になっている。

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