「議論するカップル」がフランスでは日常のワケ 映画で知るフランスの男と女と家族と文化
恋の始まりは気の利いたセリフから
“T’as d’beaux yeux, tu sais.”(ねぇ知ってるかい、君はとても美しい瞳をしている。)
映画「霧の波止場」(マルセル・カルネ監督、1938年公開)でジャン・ギャバンがミシェル・モルガンを最初に口説いたときに使った最も有名なセリフだ。ミシェル・モルガンは当時18歳。強力な目力がある美しい少女はシンプルに答える。
“Embrasse-moi”(キスして。)
80年以上の長きにわたってこの映画は、「詩的なリアリズム」を表現した名作として語り継がれている。
セリフ、はフランスではとても大事だ。
フランスでは気になる相手に話しかけるとき、それなりに気の利いたセリフを言い、相手もそれなりの返しをする。例えば「あの頃エッフェル塔の下で」(アルノー・デプレシャン監督、2015年公開)で、17歳の主人公ピエールが、その後の人生に強い印象と影響を与えるエステールを口説いたときのやり取り。
「知ってる。あなたが私の後つけてるの気づいてないと思った?私自分のこときれいだと思わないけど……。まぁ、お尻は悪くないかな。」
「囲碁をやりにうち来ない?」
「囲碁?なにそれ?」
「中国の遊びだよ。教えてあげるよ。」
「聞いたこともないわ。というか、名前ももう忘れたわ。」
「いい?まずこれが碁盤で……。」
「ぜんぜん覚え切れない。」
「もちろん1回じゃわからないよ。絶対もう一度会わないと。」
「しょっちゅう会わないといけないの?」
「もちろん、しょっちゅう定期的にね。最初の2年間は多分君もぎこちないだろうから、それから、少しずつ慣れていって……。」
「飽きたりしない?」
「まさか!すごく楽しいんだから。」


















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