今のアメリカ株はバブルでなく大崩壊もない みずほ証券・大橋英敏氏に金利、インフレを聞く
しかし、これだけ多くのインフレ要因があっても、かなり強い経済と高いインフレ率が長く続くのかといえば、そうはならない。アフターコロナで潜在成長率が下がるのはほぼ間違いない。アメリカといえども中立金利はコロナ前の2.5~3%といわれていた状態には戻らず、1%台になるとみている。
なぜなら、DX化が進められるとますますデフレ圧力が働く。例えば、コロナ禍の中での在宅勤務では経費削減効果が明らかになったので、アフターコロナでも在宅勤務は定着するだろう。DX化や環境重視の流れは既存の産業には逆風となる。
だから、景気が回復しても雇用はなかなか回復しないし、いわゆるインフレ、つまりCPIの前年比が継続的に上昇していくということも考えにくい。そうした状況ではFRBの金融緩和政策も続く。2020年に原油価格が大きく下がったりして発射台が低いので、テクニカルな反動で前年比プラス2.4%とか2.5%の物価上昇率は数四半期続く。そのことはすでにマーケットも織り込んでいる。しかし、インフレ率の上昇は1年ぐらいしか続かないだろう。
まとめると、株価を押し上げている4つの条件はどれもまだ崩れていないし、条件が崩れそうで株価に実体がないとは思えない。バリュエーションが高いともいわれるが、説明がつかないほどの高さでもない。
――そうすると、景気回復のシナリオが実現に向かっている間、まだ実現しない間は、多少の調整はあっても、「落ちてくるナイフ」といわれるような暴落はないということですね。
そう思う。実際、押し目を皆が狙っている。低金利をはじめとする4つの条件が崩れないと思っているからだ。
――では、崩れるのはいつなのか、と考えると?
やはり、本当のアフターコロナになってからだと思う。
ソブリン格下げの復活に要注意
――潜在成長率が下がる、IT革命でデフレ圧力がかかるとなると、金融緩和政策は続きそうですね。2022年以降のアフターコロナでは何が株価の暴落を招く要因になりうるでしょうか。
財政の悪化によるソブリン格下げが考えられる。それでも、基軸通貨国であるアメリカはやはり強いと思われる。先進国であるとすれば、ドイツの首相がメルケルでなくなった後の欧州には注目しておいたほうがいい。
メルケルが指導力を発揮していた欧州では緊縮財政策を取っていたので、経済成長では弱かった。しかし、EU(欧州連合)の結束は守られた。ポストメルケルの欧州ではコロナ後の復興にお金を使おう、緊縮をやめようということになっている。これは短期的には決して悪いことではなく、景気の回復が期待され、通貨ユーロが強くなってきた。
しかし一方で、メルケルなき欧州で遠心力が働くと、どうなるか。政治的に左派が強くなって、EUの結束が崩れてくるとまた債務危機が再燃するのではないか。格付け機関は今はコロナ禍であることに忖度してソブリン(国、政府の信用力)の格下げをしないでいる。しかし、格付け機関は実際ははらはらしていると思う。新興国も含めてアフターコロナになれば問題になってくる。
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