今のアメリカ株はバブルでなく大崩壊もない みずほ証券・大橋英敏氏に金利、インフレを聞く

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大橋 英敏(おおはし・ひでとし)/みずほ証券シニアエグゼクティブ兼金融市場調査部チーフクレジットストラテジスト。2015年12月よりみずほ証券。同志社大学卒業後、1991〜2000年日本生命保険で運用に携わる。2000年からモルガン・スタンレー証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)、2012年よりジャパン・クレジット・アドバイザリー株式会社を創業。長年、クレジット市場分析を担当。1997年大阪大学大学院で修士号取得(経済学)。『クレジット投資のすべて』等著書多数(写真:みずほ証券提供)

――今のアメリカ株はバブルだという人もいますが、どう見ていますか。

バブルとは見ていない。バブルだと主張する人がよく引き合いに出すのはいわゆるバフェット指数で、株価の時価総額の合計がアメリカの名目GDP(国内総生産)の何倍買われているか、というものだ。しかし、長く低インフレが続いたので、過去と今とでは金融政策や貨幣の価値が違っている。

また、アメリカの主要銘柄も昔とは異なる。今の株価を牽引している銘柄は、世界中から富を集めてくるプラットフォームのビジネスだ。アメリカ1国のGDP対比の時価総額が過去よりも現在のほうが高いのでバブルだという主張には、無理がある。

ただ、今のアメリカの株価がいくつかの条件の下で正当化されているのは事実だ。その条件が崩れたら株価は下がる。

株価を支える条件とは、第1に金融緩和の継続、第2に財政拡張政策の継続、第3に低いインフレ率、第4に新型コロナは1年以内に収束するということ。この4つはいずれもまだ崩れていない。足元では3つめのインフレが気になるね、という程度だ。

強い経済、高いインフレ率は長続きはしない

確かに、アメリカにおいてインフレの芽はいっぱいある。これも主なものは4つ。

1つ目は、コモディティ価格が上がっていること。これはペントアップ需要への期待に加えて脱炭素・電化をテーマにそれに必要な銅や銀に投機資金が回っているためだ。これが生産者物価に跳ね返っているので、いずれCPIも上がるのではないか、という予想につながる。

2つ目はアメリカの財政拡張。1.9兆ドルもの巨額支出を決め、1人1400ドルの給付金という前回の2倍のばらまきを実施する。日本人は経験上、財政拡張したって簡単にインフレになるわけではないと思っているけれども、アメリカではなると思っている人も多い。

3つ目は金融拡張がしばらく続くこと。4つ目はペントアップ需要が膨らむこと。アメリカでは新型コロナの被害が大きく怖がっていたので、ワクチンが普及してアフターコロナとなったら、人々が解放されてものすごく浮かれた経済になるのはまず間違いない。2021年半ばから成長率、インフレ率は高まる。

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