米長期金利が一服しても、拭えない「不透明感」 財政大盤振る舞いでインフレの火種もくすぶる

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FRBのパウエル議長は、金利安定に向け難しい舵取りを迫られている(写真:AFP=時事)

アメリカの長期金利の上昇が世界の金融マーケットを揺さぶっている。

米長期金利が約1年ぶりに一時1.6%台に乗せた翌日2月26日の日経平均株価は前日比1202円安と、4年8カ月ぶりの下げ幅を記録。その後、米金利の上昇一服で落ち着きを取り戻したが、アメリカを中心に景気過熱感が高まる中、先行き不透明感は強い。

米長期金利の指標となる10年物国債利回りは、2018年の秋には3.2%台だった。それがFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の連続利上げによる景気悪化懸念から低下に転じ、新型コロナ危機発生で1%台後半から一気に急落。一時0.5%を下回った。

だが、昨夏を底に米金利は反転する。ゼロ金利復活、無制限の量的緩和、一部のジャンク債(低格付け債)も対象とした社債買い入れなどという、これまた異例の超金融緩和、そして昨年1年間で総額4兆ドル(400兆円以上)もの巨額経済対策によってアメリカの景気回復期待が高まったからだ。

実際、2020年4~6月期に前期比年率31%減と急落したアメリカの実質GDP(国内総生産)は、7~9月期に同33%増と急反発。10~12月期も同4%増となり、2020年の成長率はマイナス3.5%と、先進主要国で下げ幅が最も小さかった。

年明けから金利上昇が加速

そして、米長期金利が1%を上回って上昇を加速したのが今年に入ってから。ジョージア州で行われた連邦議会上院の決選投票で民主党が2議席とも獲得、民主党がホワイトハウス、上下両院の主導権を握る「ブルーウエーブ」が実現し、バイデン政権の財政拡張による各種景気刺激策が議会を通りやすくなったからだ。

アメリカの下院は2月27日に1.9兆ドル(約200兆円)の追加経済対策法案を民主党単独で可決。勢力がほぼ拮抗する上院でやや減額される可能性があるものの、3月中旬にも通過しそうだ。

1.9兆ドルという額はアメリカの名目GDPの9%分に相当する。その対策の柱は1人当たり1400ドル(約15万円)の現金給付だ。

「コロナのワクチンが普及して人々の不安がなくなっていく中で追加的に給付されるので、貯蓄より消費に回そうという志向が強まる」。大和総研ニューヨークリサーチセンターの矢作大祐研究員はそう指摘する。

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