米長期金利が一服しても、拭えない「不透明感」 財政大盤振る舞いでインフレの火種もくすぶる

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

FRBのパウエル議長は2月23日の議会公聴会で、2021年のアメリカの経済成長率が6%程度に高まる可能性があると述べた。バイデン政権は4年間で2兆ドルの環境インフラ対策も目指しており、そのうち数千億ドル規模の投資減税だけは年内に可決されると見込む矢作氏は、成長率は10%に近づく可能性もあるとみる。

金利上昇の良し悪し

長期金利は経済の体温計ともいえ、景気がよくなれば上昇する。それは「よい金利上昇」だ。だが、経済対策の財源の主体は国債増発。バイデン政権は富裕層・企業増税も提案しているが、22年の中間選挙を意識して後回しになる可能性がある。となると財政赤字が急増し、国債格下げ懸念からくる「悪い金利上昇」となる可能性もある。

もう1つの懸念がインフレ加速に伴う金利上昇だ。足元のインフレ率はまだ1.5%程度。FRBが目標とする2%程度へ緩やかに上昇し、安定化するのがベストシナリオだ。

だが、予想インフレ率が6年ぶりに2.2%台の高水準となるなど、市場の懸念は高まっている。実際のインフレ率が2%を超えていけば、長期金利の上昇が加速し、FRBによる金融引き締めが想定より前倒しになる可能性が高まる。

パウエル議長は当面インフレ率が上昇しても一時的な反動と説明し、火消しに懸命だ。失業者数もなおコロナ前より1000万人近く多い現状、利上げ再開は2024年以降で、テーパリング(量的緩和の縮小)の議論も時期尚早との立場だ。

確かに、世界的にデジタル化、グローバル化、高齢化が進み、物価は上がりにくくなっている。景気回復が進む中でも低インフレ・雇用停滞で超金融緩和が長期化するという、株式市場にとって都合のいい環境がまだまだ続く可能性は高い。

米株価は予想PER(株価収益率)が22~23倍で、すでに2023年の企業収益をも先取りする水準まで上昇した。バブルと言わずとも割高感が強いだけに、金利上昇に振り回されやすくなっている。

FRB内部にはタカ派的な見方も増えており、2013年の「バーナンキショック」のような予期せぬ市場混乱を招くリスクがある。アメリカなどよりもワクチン普及の遅い新興国や、景気の戻りが鈍い割に株価が急騰した日本などへの負の連鎖には今後も注意を怠れない。

中村 稔 東洋経済 編集委員
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事