新型コロナ「武漢より前に世界拡散」の衝撃事実 インフルエンザの感染者にまぎれていた可能性

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世界の各国に比べ、日本や韓国、台湾など東アジア地域では、新型コロナウイルスの死亡者がかなり抑えられています。一方で、重症化する人が多い地域もあります。その1つの可能性として浮上したのが、絶滅したネアンデルタール人です。約50万年前から4万年前までヨーロッパ大陸などに住んでいました。

ネアンデルタール人と現生人類とは無関係で、両者は交雑できないとされてきました。しかし、PCR検査の発達により、彼らのDNAが現生人類に受け継がれていたことがわかり、近い関係にあったことが明らかになりました。私たちが多くの感染症から逃れて存続できたのは、先祖から受け継いだ遺伝子によってウイルスに打ち勝ってきたから、という可能性もでてきました。

(画像提供:KADOKAWA)

ありがたくない遺伝子も受け継いでいる

しかし、いいことずくめではありません。ありがたくない遺伝子も受け継いだこともわかってきました。2020年9月30日、英科学誌『ネイチャー』電子版に、マックス・プランク進化人類学研究所の研究者によるこんな発表がありました。

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「約6万年前に交雑によって現生人類が受け継いだネアンデルタール人のある遺伝子が、新型コロナウイルスの重症化リスクを高めている」。つまり、ネアンデルタール人からこの遺伝子を受け継いだ人が新型コロナに感染すると、人工呼吸器が必要となる可能性が3倍高くなるというのです。

イギリスではバングラデシュ出身者の重症者・死者の割合が、そうではないイギリス人と比較して2倍も高いことが話題になりました。マックス・プランク進化人類学研究所の遺伝学研究部門トップのスバンテ・ペーボは、「ネアンデルタール人の遺伝的遺産が、現在のコロナ・パンデミックの中でこのような悲劇的な結果をもたらしているのは衝撃的だ」と述べています。

ネアンデルタール人から継承したある遺伝子の保有者は、ヨーロッパでは約に16%に対し、南アジアでは地域によって約50%に達し、東アジアではわずか4%です。これが東アジア諸国・地域で重症者が少ない理由とも考えられます。

(画像提供:KADOKAWA)
石 弘之 ジャーナリスト

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いし ひろゆき / Hiroyuki Ishi

1940年東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問、東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授などを歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞をそれぞれ受賞。主な著書に『感染症の世界史』『鉄条網の世界史(共著)』(角川ソフィア文庫)、『環境再興史』『砂戦争 知られざる資源争奪戦』(角川新書)、『地球環境報告』(岩波新書)など多数。

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