マスク時代の会話「目線の工夫」取り入れるコツ 池上彰×佐藤優が語る「伝え方の極意」

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池上:コロナが収束したのちも、部分的にリモートワークは根付いていくことになるでしょうね。ちなみにそのほかで、私がリモートで会話をする際に気をつけている点は、PCのカメラに目線が行くようにすることです。複数名での打ち合わせでは、PCのスクリーンに相手の顔がコマ割りで表示されるので、無意識のうちに話している相手のほうを見る。するとそのときの自分の様子は、相手の画面上では目をそらしているように映るのです。

佐藤:なるほど。リモートの場合、対面式の会話と同じ要領で画面に映る話者のほうを見てしまうと、かえって相手から目をそらして聞いているような格好になってしまうというのは、対面式のコミュニケーションでは起こりえなかったことですね。このような場合、どう対処したらいいと思いますか?

池上:たとえば、PC画面の上に打ち合わせ用の資料を置いて話す。相手の顔は見えにくくなりますが、こうするとPCのカメラに自然と目線が行きます。このようにちょっとしたコツを意識することで、相手に好印象を与えることができるのです。

リモートツール使い分けの極意

佐藤:リモートワークの普及に伴って、オンライン会議ツールの一般的なリテラシーも上がったのではないかと思います。いろいろなツールがありますが、池上さんはシチュエーションごとに使い分けをされていますか?

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池上:私の場合は、大学の授業は基本的にZoomです。大学の大教室で「質問はありますか?」と聞いてもなかなか手が挙がらないのですが、Zoomのチャット欄だと質問しやすいようですね。授業中に質問が書き込まれたら「今、こういう質問があったので答えますね」ともっていくこともできるので、Zoomのチャット機能によって、より話し手と聞き手のやり取りが活発な授業が可能になっています。

佐藤:なるほど。テレビ関係の仕事の打ち合わせなどでは、どのようなツールを使っていらっしゃいますか?

池上:テレビ局との打ち合わせはTeamsかGoogle Meetですね。少人数の打ち合わせでSkypeを使ったこともありますし、佐藤さんとはFaceTimeでお話ししたこともありますよね。でも普段よく使うものというと、大学の授業はZoom、テレビ局ではTeamsという使い分けです。佐藤さんはいかがですか?

佐藤:私も大学関係は、大学側の指定でZoomを使っています。自分のゼミだけはTeamsを使っていますが、少人数ならば昔から使い慣れているSkypeを使うこともあります。FaceTimeもよく使います。Appleユーザー同士の閉鎖型ツールであり、セキュリティ関係で難しい設定をせずに、すぐに使えますから。

池上:簡易的なものはセキュリティ面が甘く、セキュリティ面で手堅いものは使いにくいという、バランスから判断して、用途次第で何を使うかを選ぶといいかもしれません。それと今、挙がったツールは、すべて画面共有できる。自分の手元で表示している資料を相手にも見せながら会話できるという機能は非常に便利ですよね。

佐藤:はい。巷にはいろいろなリモートツールが存在しますが、対人関係上の「あたりまえ」が激変する時代が到来しているなか、一人一人が使う場面に適したツールを選び、使いこなす、というのも大切な教養だと思います。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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