製造業向けの生産管理ソフトウェアを手がける中国の黒湖智造(ブラックレイク)は2月22日、シンガポールの政府系ファンドのテマセク・ホールディングスをリード投資家とする約5億元(約81億円)のシリーズCの資金調達ラウンドを完了したと発表した。
2016年創業の同社は上海市に本社を置き、製造現場の工程管理を最適化するMES(製造実行システム)と呼ばれるソリューションをクラウドベースのSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)方式で提供している。MESやERP(統合基幹業務システム)など産業用ソフトウェアの市場には、ドイツのSAPやシーメンス、アメリカのハネウェルなどが主要プレーヤーとして君臨する。
そこに食い込みを図る黒湖智造の強みは、外資系大手よりも圧倒的に安い価格だ。顧客別にカスタマイズされたMESは外資系大手なら数百万元はするが、黒湖智造のSaaS方式なら数十万元ですむ。しかも、同社のシステムは(自前のコンピューターを持たなくても)クラウドサービス上に構築することが可能だ。
顧客とともに東南アジア進出目指す
黒湖智造はSaaS方式によるソフトウェア提供を2018年10月から開始。それ以降、食品、飲料、製薬、化学、家電、樹脂、金属、自動車、エレクトロニクスなど幅広い業界の約2000社の製造業にソリューションを提供しているという。
「シリーズCで調達した資金は、東南アジア諸国への布石を含む市場開拓に充てる」。黒湖智造の創業者でCEO(最高経営責任者)を務める周宇翔氏は、財新記者の取材に応じてそう語った。
中国の製造業の成熟化とともに、労働集約型の製造業が工場を東南アジアに移す動きが盛んになっている。そんななか、黒湖智造は顧客の工場移転に随伴してベトナム、マレーシア、インドネシアに進出しようとしている。シリーズCのリード投資家にテマセクを迎え入れた狙いは、そのためのサポートを得ることだ。
同社はすでにソフトウェアのベトナム語版とインドネシア語版を開発し、一部の企業とは契約を結んだ。しかし新型コロナウイルスの影響で、東南アジアへの進出は一時的に足踏みしている。コロナの流行が収束し、国境を越える人の往来が再開され次第、現地でソフトウェアの動作検証を開始するもくろみだ。
(財新記者:張而弛)
※原文の配信は2月22日
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