ハリウッドで横行する賞をめぐる「接待」の実態 ゴールデングローブ賞の裏側にある癒着の構造
HFPAは非営利団体であるため、非課税の恩恵も受けている。その使命は、基本的にアメリカの文化と芸能界の取材を通じてアメリカと外国との結びつきを強めることにある、とされている。
だが、HFPAはゴールデングローブ賞の選考で不可解な決定を下すことが多く、そのたびに疑惑の目を向けられてきた。中でも、1982年にピア・ザドラがキャスリーン・ターナーとエリザベス・マクガヴァンを抑えて映画新人賞に選ばれた一件は悪名高い。
というのは、ザドラが主演した映画の制作費を出していた人物(ザドラの夫でもあった)が、投票前にHFPAの会員をラスベガス旅行で接待していたことが後になって発覚したからだ。当時、ゴールデングローブ賞を放映していたCBSは放送を取りやめ、同賞が全米ネットワークに復帰するまでには何年という時間がかかった。
2014年には、HFPAの元会長が回顧録を出版し、会員の判断は接待で揺らぐことがあるとほのめかしてもいる。
125ドル超える贈答品は禁止に
HFPAがイメージの立て直しを図るようになって久しい。1999年には映画会社から会員に贈られてきたコーチの腕時計(400ドル相当)を送り返した。2016年には『ノクターナル・アニマルズ』のプロデューサーから贈られたトム・フォードの香水を返すよう会員に求めたこともあった。最近では、会員は125ドルを超える贈答品を受け取ってはならないことになっている(贈答品について「一段と厳格な」規定を導入した、とHFPAは言う)。
それでも、会員の取り込み工作は続いている。というわけで、今年のゴールデングローブ賞で泡沫候補とみられていたドラマ『エミリー、パリへ行く』(批評家の中にはかなり厳しい評価を下す人もいた作品だ)が2部門にノミネートを果たしたと聞いて、中には「やっぱり」と思った人もいた。
2019年9月に数十人の会員が、同作品を制作したパラマウント・ネットワークからパリの撮影現場に招かれ、5つ星のペニンシュラホテルでもてなしを受けていたからである。 =敬称略=
(執筆:Cara Buckley記者、Matt Stevens記者)
(C)2021 The New York Times News Services
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