英国名車を1カ月で手放した男、その残念な理由 デイムラー ダブルシックスのほろ苦い思い出
ダブルシックスは2台続けて乗った。1台目は91年製、2台目は93年製。カタログ的にはとくに変化はなかったものの、僕は躊躇することなく93年製に買い換えた。中身も外観も基本同じなのに、なぜ91年製から93年製に乗り換えたのか、不思議に思う人もいるだろう。
答えは簡単。デイムラー ダブルシックス(ジャガー XJ シリーズ3)の「生産終了が決まった」からだ。ちなみにXJ……1986年には次世代モデルがデビューしている。だが、「クラシック」の香りすら漂わせる「シリーズ3」の人気は高く、デイムラー版を含めて生産は続行された。7年もの長きに亘って……。
静的に、のみならず、動的にも……すべてに「美しい!」と形容できる名車……その最終生産モデルを、僕はなんとしても手に入れたかった。
ジャガーを一流のプレミアムブランドに育て上げた、サー ウィリアム ライオンズの美意識には、今なお惹かれ続けている。彼の代表作ともいえる、ジャガー マークⅡ、ジャガー Eタイプは、永遠に僕の憧れだ。そして、XJ サルーン シリーズ3は、その延長上に位置する作品。彼が直接関わった最後の作品でもあるのだから……。
自分好みに仕立てたダブルシックスに乗りたい
91年製を93年製に買い換えた理由はもうひとつある。91年製は、なにも考えず「ありもの」を買った。でも、心の中に、「自分好みに仕立てたダブルシックスに乗りたい」との思いはずっとつきまとっていた。
生産終了の話を聞いたとき、その思いは我慢しきれないほどになり、実行に移した。
ボディカラーは濃紺、革シートはアイボリーホワイト、シートにはワイン系のパイピング……確か、そんなオーダーだったと思う。多くをオーダーできるわけではなかったが、それでも満足度は高かった。
当時、ジャガー・ジャパンの広報責任者であられたK氏にもあれこれサポートいただき、オーダーの作業も問題なく進んだ。このK氏、なにごとにも強い拘りを持つ好事家。そのガレージには今もダブルシックスがさりげなく置かれている。