トヨタ「ヤリス」発売1年、絶対王者の通信簿 激戦のコンパクトクラスで価値を創出できるか
また、アクアを含めた従来のハイブリッドシステムは、初代「プリウス」から継承する直列4気筒ガソリンエンジンを基にしたTHSⅡを活用したものだったが、ヤリスから直列3気筒ガソリンエンジンによるさらに高効率なシステムへ変更された。これによって、HVはWLTCのカタログ燃費で36.0km/Lの高性能を実現し、これは軽自動車を上回る。ちなみにホンダ・フィットは29.4km/Lで、日産・ノートは29.5km/Lである。
ヤリスクロスのデビューも販売台数1位の要因
あらゆる面で優れた商品性を備えたヤリスが、販売1位となるのは当然に見える。だが、その内訳を調べると、ヤリスは11万5300台で、SUV(スポーツ多目的車)の「ヤリスクロス」が3万2810台、スポーツ仕様の「GRヤリス」が3670台となっており、ヤリスという車名を持ちながら異なる車種が年間1位の成績に含まれているのがわかる。
また今年1月の販売台数では、ヤリスが約8180台で、ヤリスクロスは約9350台となっており、SUV人気を象徴している。ちなみに1月のGRヤリスは約980台だ。直近で言えば、コンパクトカーのヤリスより、SUVのヤリスクロスのほうが売れている。その数がヤリスの販売台数に含まれていることを考えると、純粋にコンパクトカーのヤリスが売れているとは言い難いところもある。
これを考慮して2020年の販売台数を見ると、ヤリス(ヤリスクロスやGRヤリスを含まず)が11万5300台、2位のライズが12万6038台、3位のカローラが11万8276台と、ライズやカローラより年間を通じてわずかに台数が少ない。4位となったフィットの9万8210台に迫られているともいえそうだ。もちろんこのことは、ヤリスの商品性を疑わせる材料ではない。トヨタが同じ車名を名乗りながら形態の異なる車種を販売することは、これまでにもあった販売戦略のうまさである。
そのなかで、あえて課題を考えるなら、競合の日産ノートが発売から間もなく月販販売目標8000台の2.5倍の受注を得たことや、フィットがコンパクトカー同士の台数で背後に迫るとき、どのように競争力を維持するかを考えておく必要があるかもしれない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら