学ばない「古い人」が実権握る日本の致命的弱点 中島聡さんが語る「デジタル」との向き合い方

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例えば、日本人の政治家で、ビットコインに関するサトシナカモトの論文をきちんと読んだことがある人はどれだけいるでしょうか。あの論文は、たかだか10ページほどで、英語さえ読めればそれほど難しくない内容です。サトシナカモトの論文に書いてあることがわかれば、仮想通貨がどんなものなのかを根本から理解することができるはずですが、おそらくきちんと論文を読んだことのある政治家はほとんどいないでしょう。企業も同じ問題を抱えていて、まったく勉強をしない「古い人」が、黒塗りの車に運転者を抱えながら、上のポストに居座っていることがよくあります。意味がわかりません。

須賀:今の時代は企業のトップの経営者でも、膨大な情報をそしゃくして、あらゆる領域、階層において相当な勉強量が必要なはずですが、日本企業のホワイトカラーの方はリカレント教育についての議論も、なぜか自分に関係のない話だと思っています。日本人は、勉強し続けることに対してぬるさがありますよね。

中島:アメリカでも、50代後半くらいで引退資金もたまり、辞めようとする人が出てきますが、そういった人は企業や政治の重要なポストからは自然と降りていきます。70〜80歳くらいまで働き続ける人もいますが、そういった人は異常なほどに勉強し続けているワーカホリックな人がほとんどです。

マイクロソフトでの経験

須賀:中島さんのキャリアについてもお聞かせください。中島さんは若くして、マイクロソフトに移られ、「ウィンドウズ95」というキラープロジェクトのチーフアーキテクトになられています。その後はどのようなキャリアを形成されたのでしょうか?

中島:マイクロソフトには13年半ほど在籍して、キャリアの中でも最も楽しかった時期を過ごしました。ただ、マイクロソフトは1990年代後半に一度ピークを迎えてから、あまりよくない時期が続きました。会社が大きくなりすぎたことで、社内政治が増えたり、私のようなプログラマーとして活躍してきた人たちが出世をし、必ずしも得意ではないマネジメントの側に回るようになったりと、さまざまな理由からよくない状況に向かってしまったのだと思います。

私としては、もう少しプログラマーとして自由に動きたかったので、マイクロソフトをやめ、UIEvolutionという会社をつくりましたが、自分が社長になると、ベンチャーキャピタルからお金を集めたり、社員のマネジメントをしたりしなくてはならなくなり、むしろプログラムを書く時間はほとんどなくなってしまいました。その会社をスクウェア・エニックスに売却して、そのままそこで働いた後に、会社を買い戻して自分で経営するようになりました。今度は自動車業界で成功することができ、2019年に、もう一度、別の会社に売却しました。

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